ウィズコロナの夏競馬攻略!智将・中村均元調教師が極意伝授

2020年08月14日 17時45分

中村均元JRA調教師

 場内の熱気や歓声が伝わることがないため、出走全馬がリラックスして人気通りの結果が多くなる――。コロナによる無観客開催が始まる前、こう言われていたはずの中央競馬が今夏、荒れに荒れている。その原因解明は容易ではないが、重要なのは一筋縄ではいかない令和2年のウィズコロナ競馬をどう攻略するかだ。そんな難題に立ち上がってくれたのは奇襲印(★)でおなじみ、本紙専属競馬評論家の中村均元JRA調教師(71)。今年、スポーツ功労者として顕彰された逆転競馬の達人が、“下克上馬券”のヒントをくれた。

 今年、中央競馬が大きく荒れている。4月25日にJRA史上最多となる単勝万馬券一日5本が出たかと思えば、先月19日には2重賞(函館記念、中京記念)がともに3連単300万超えの配当になった。2月29日からの無観客開催が始まる前は、観客がいなくなることで馬のイレ込みが減り、実力通りのレースが増えるとの前評判だったが…なぜ? この問いに対する答えは容易ではない。

「私もなかなか馬券で難儀をしているし、確かに今年の競馬は荒れています。でも、それがどんな要因によるものか明確な答えは難しい。ただ、こじつければいくらでも言えることはあります。例えばいつも競馬場に行ってパドックを見て馬券を当てていた人は、無観客開催でそれができなくなっています。そういうところも人気と結果のバランスの崩壊につながっているのかもしれない」

 こう話すのは智将・中村均元JRA調教師だ。こんなところにもコロナが侵食している? 特に波乱が顕著なのは宝塚記念が終了し、本格的な夏競馬がスタートしてから。

 CBC賞で13番人気のラブカンプーが激勝したのを皮切りに、7月以降の平地重賞では単勝2桁人気の馬が5勝した。

「夏場の競馬は本来なら逆転されることがないほどの能力差がひっくり返ってしまうことが多い。個々の能力以上に、暑さがレース結果に影響しますから。昔は、夏に走っている馬といえば夏場に強い馬ばかりでしたが、今は厩舎内でクーラーやミストをつけて暑さをあまり感じない。そういう馬が競馬に出走するたびに、強い暑さにさらされて参ってしまい番狂わせが起きる…。こんなこともあるかもしれません」

 問題は難解な今の競馬をどう攻略するかだ。人気いかんにかかわらず、智将には経験則上、夏場に無条件に評価を下げるべき馬がいるという。

「休まずに3回目の競馬を使ってきた馬です。いくら涼しい北海道でも夏場に連続3走は厳しい。かつて私が管理したインターマイウェイは新馬、クローバー賞を連勝し、続く函館3歳S(当時)も楽勝すると思っていた。それが惨敗(9着)。状態はとてもいいと思っていたが、マラソン選手がレースの中盤で突然バテるようにレースの途中で一気に疲れてしまった。これからお盆を過ぎて夏場の3走目を迎える馬が増えてくると思いますが、あまり積極的に買いたいとは思いません」

 では、どの馬を買えばいいのか? これが一番の難題だ。

「やはり当日のパドックをしっかり見るというのが大事です。今は無観客開催でイレ込む馬が少なく比較がしにくいですが、そんな中でも見るべきところはあります」

 智将が提唱するコロナ時代の“リモートパドック”注目ポイントとは?

「チェックしてほしいところは人と馬がどういった相互関係で歩いているか。それを見るには馬の口にかませる金具であるハミと、それにつながる引き手(馬につける綱)を重点に見たらいい」

 かつて智将は現役調教師時代、ベテラン厩務員からこんなことを言われたことがあるという。

「検疫所に初めて担当する馬が来て、それを厩舎に連れて帰る時、ハミから引き手に伝わる感触でその馬が走るか、走らないかが俺たちは一瞬でわかるんだ」。つまりはハミとそこにつながる引き手に馬の活力がちゃんと伝わっている。それをパドックで読み取るのだ。

「ベストは馬がパドックを歩く時、引き手がピーンと張って厩務員の手が軽く引っ張られてヒジが伸びるような状況。馬がイレ込んで小走りになって厩務員を引っ張ってしまうような動きとは違うもので、これが適度に見られる人馬はデキがいいと推察できます。微妙な動きですが、これらが状態の良さを見抜くことにつながるんです」

 加えて、馬のつくりを見るうえで重要点は「ボイルソーセージをイメージせよ」だ。

「本当に調子がいい馬は、体の張りがまるでボイルしたソーセージの皮が張り裂ける直前、パツンパツンに張り詰めた感じで、それが体全体に出ています。そういう馬体は総じて調子がいい」

 結論は――。この夏は連続3走目以上の馬の評価を下げて、あとはパドックで智将理論に従ってキュウ務員&馬の相互関係をチェックし、ボイルソーセージのように張り詰めた馬を買えばいい。これで荒れるコロナ禍での下克上馬券をゲットできるはずだ。

☆なかむら・ひとし=1948年9月13日生まれ、京都府出身。麻布大学獣医学部卒業後、71年に父親の中村覚之助厩舎の厩務員となる。77年に28歳の若さで調教師免許を取得、厩舎開業後はトウカイローマン(84年オークス)、マイネルマックス(96年朝日杯3歳S)、ビートブラック(2012年天皇賞・春)でGⅠ制覇を達成。また04年から10年まで日本調教師会の会長を務める。20年には文部科学省からプロスポーツの発展に貢献したとして「スポーツ功労者」を顕彰された。好きな戦国武将は石田三成。