【宝塚記念・後記】新女帝クロノジェネシス歴史的圧勝の秘密 キセキ騎乗の武豊は脱帽「バケモノがいた」

2020年06月29日 18時38分

完璧な騎乗で完勝の北村友=クロノジェネシス

 28日、JRA(日本中央競馬会)上半期のフィナーレとして行われたGI第61回宝塚記念(阪神芝内2200メートル)を制したのは2番人気のクロノジェネシス(牝4・斉藤崇)。GI馬8頭が揃った豪華決戦だっただけに、ゴール前で競り合う“肉弾戦”をイメージしたファンも多かったはずだが、結果はレース史上最大の6馬身差の楽勝だった。昨年の有馬記念を5馬身差で圧勝したリスグラシューをほうふつとさせるパフォーマンスが意味するものとは何か? 2頭の牝馬の共通点をなぞりながらクロノジェネシスの可能性を探っていく。なお、1番人気のサートゥルナーリアは勝ち馬に12馬身3/4差の4着に完敗した。

 レースの30分前に降ったゲリラ豪雨。これが勝利のアシストになったのは間違いないだろう。だが、本当にそれだけが勝因なのか? 楽々と突き抜けたクロノジェネシスが2着キセキにつけた着差は1994年ビワハヤヒデの5馬身、2006年ディープインパクトの4馬身を上回る6馬身。これは宝塚記念史上最大の着差だった。異常なまでの強さ。4角先頭の横綱相撲を見せつけられ、検量室に戻った武豊は角居調教師に「バケモノがいた」と脱帽。レース後、担当の和田助手も「俺もびっくりした」と驚いたほどで、関係者の予想をもはるかに超えるレース内容だった。しかし、同馬が単なる道悪巧者ではないことは、上がり32秒台をマークして勝ち切った過去の成績が示している。それでは、この驚がくの勝ちっぷりの理由はどこにあるのか?

 牝馬は早熟で牡馬は成長力に富む――。この世界で長く語り継がれてきた常識が、ここ数年で一気に変わってきている。例えば、昨年の宝塚記念覇者であり、年度代表馬に選出されたリスグラシュー。彼女は2歳夏にデビューした430キロ台の小柄な馬で、早熟で競馬センスの高さこそがセールスポイント。少なくとも、本格化を果たした一昨年の秋まではそのようなイメージで語られていた馬だった。そして、今回のクロノジェネシスもまた2歳夏にデビューし、当時の馬体重は440キロ。堅実な末脚はセールスポイントだが、タイトルを取るほどの破壊力はない――それが3歳春までのイメージだったはずだ。だが、リスグラシューが馬体のボリュームアップと比例して成長していったように、クロノジェネシスも昨年の同時期とは比較にならないほどに成長。前走比で10キロ増だった今回の464キロはキャリア最高体重だった。3歳のオークス時(3着=432キロ)に比べると実に30キロ以上の増量に成功。成長は1年早いが、まるでリスグラシューの軌跡をなぞるような成長過程ではないか。

「10キロ増の馬体重が示すように以前よりもパワーアップしています。それも太めではなく、しっかりと仕上がってのものですから。(勝負どころでは)こちらがゴーサインを出したのではなく、馬が強過ぎて自然と上がって行った形。ずっと乗っている馬ですし、この手応えなら絶対に伸びてくれると思っていました」と主戦の北村友が真っ先に挙げた勝因も2桁の体重増=同馬の成長力だった。もちろん、見守った斉藤崇調教師もそれは同じで「この相手にこれだけのパフォーマンスをしてくれるとは思いませんでしたが、成長が体重増に表れているのは確かです。強い馬たちを相手に結果を出してくれたことで選択肢は広がりましたし、どこへ行っても活躍してくれると思う」。

 次走について明言こそしなかったが、この春歩んだのと同じように、秋も王道路線を進むことになるだろう。アーモンドアイを筆頭とした未対戦の強敵との対戦が早くも楽しみだが、馬場不問というファクターも加えれば、安定感では現役ナンバーワン。それこそリスグラシューのような活躍を期待したい。

 それにしても…。今年上半期に行われた牡牝混合の平地芝古馬GIは牝馬の5戦4勝(今春の古馬混合平地芝GIは高松宮記念=モズスーパーフレア、大阪杯=ラッキーライラック、安田記念=グランアレグリア、宝塚記念=クロノジェネシスと牝馬が4勝。牡馬は天皇賞・春=フィエールマンの1勝に終わった)。宝塚記念は近5年で3頭が牝馬の勝利だ。前から言われていることではあるが、なんとも牝馬が強い時代になったものだ。