【宝塚記念】サートゥルナーリアの「猛暑不安説」を追跡

2020年06月23日 19時31分

ロードカナロア産駒は暑さに弱い。そんなジンクスをサートゥルナーリアが吹っ飛ばす

【宝塚記念(日曜=28日、阪神芝内2200メートル)角居厩舎番の松浪が直撃】JRA上半期の総決算は、レース史上最多のGI馬8頭が参戦する第61回宝塚記念。サマーグランプリの主役候補は9戦6勝の皐月賞馬サートゥルナーリアでその非凡な素質は誰もが認めるところだが、常に不安材料も…。「左回りはダメ」という疑惑を前走で払拭した今回は「暑さは超苦手」。角居厩舎番として長く“密”な取材を続けてきた松浪大樹記者がサートゥルナーリアの「真実」に迫った。

 新型コロナウイルスの影響で海外遠征が消滅し、例年よりも豪華なメンバーになった今年の宝塚記念。だが、現役最強を目指すサートゥルナーリアの陣営は相手関係をあまり気にしていない。過去最高と思えた神戸新聞杯以上に順調な調整過程を証明した1週前追い切り(17日の栗東ウッドでルメールを背にしたサートゥルナーリアは6ハロン79・9―37・2―11・3秒。前を行く自厩舎の併せ馬との差を一気に詰め、直線は突き抜けた。軸のぶれないフットワークは素晴らしいの一語)の素晴らしい動き。大好きな右手前でコーナーを走れる右回りにコースも替わる。馬なりのままで位置を押し上げ、直線を待たずに一気に突き放す――個人的にはそんなイメージを持っているほどだ。

 だが、初夏のグランプリは単純な能力差だけでは押し切れない。例えば2強対決に沸いた1999年(スペシャルウィークが4角先頭から押し切りVを狙うところを、同馬マークのグラスワンダーが上がり最速35秒1で一気に差し切って3馬身差をつけた)。単勝オッズ1・5倍の支持を受けたスペシャルウィークは暑さに弱く、グラスワンダーの末脚をしのげるだけのパワーが残っていなかった。30度を超える気温との闘いも大事なポイントと考えた時、思い出すのは1年前のダービー前日。決戦の地へ出発する同馬を栗東トレセンで見送った記者に角居調教師は「ウオッカ(2007年)の勝ったダービーも暑い一日だった」とポツリ。もちろん、それは勝利を意識してのものだったろうが、ロードカナロア産駒は暑さに弱い。そんな認識を持っていた記者にとってはネガティブな予言だった。

「カナロア自身が暑さに弱く、それが2年連続でセントウルS(12、13年=ともに2着)を取りこぼした理由になっているんですけど、産駒にもその傾向が伝わっているように思うんです。ダノンスマッシュを(一昨年から)北海道に連れて行った理由もそれですし、実際に冬場のほうが雰囲気もいい」と同馬を管理していた安田隆厩舎の安田助手から聞いた経緯があったためだ。

 最高気温は32度。猛烈な暑さだった昨年のダービーで腹回りにびっしょりと汗をかいていたサートゥルナーリアの姿とその後の結果(4着)を見て、前述した不安が的中してしまった…と当時は思った。

 だが、あまりにもショッキングな敗戦に翌週以降の追跡取材ができなかったのも事実。死角のない状況だからこそ、あの一戦を改めて振り返っておく必要がある。

 ゆえに決戦の1週前。同馬の調教パートナーであり、ダービー当日の同馬を知っている小滝助手に電話取材を敢行。その用件を伝えると「確かにゲート裏ではかなりの汗をかいていましたね」。だが、それ以降のジャッジが記者とは違った。

「ロードカナロア産駒が暑さに弱いような話は当時から耳に入っていましたし、僕も気にはしていたんですけど、パドックから返し馬までは問題がなかったし、戻ってきた時も熱中症のような症状を見せることはありませんでした。確かにあれだけの汗をかけば、不安に思うかもしれません。でも、サートゥルナーリアは普段から他の馬以上に汗をかくタイプ。神戸新聞杯に向かう過程も残暑は厳しかったですけど、夏負けのような雰囲気はありませんでした。今回もそれは同じです」

 それでも、あの日のサートゥルナーリアの雰囲気は異常だった。暑さが理由でないとするなら何が問題だったのか? その部分をさらに突っ込んでみると「結果的には皐月賞までの過程ですね。絶対に勝たなくては…と思っていたので、休み明けなのに強い追い切りを重ねて馬を追い込んでしまった。それがダービーまで尾を引いてしまったんです。心身ともに苦しかったからこそ、スタート直前にイレ込み、過度に汗をかいてしまった。左回りもあるかもしれませんが、それが一番の理由と僕自身は思っています」と小滝助手。

 あれから1年余の時間が経過。2つの勝利と2つの敗戦を経て、サートゥルナーリアに対するアプローチはずいぶんと変わった。答えが見えたと言ってもいいだろうか。

「ウチの厩舎は普段から坂路の時計が速い。未勝利馬でも(4ハロン)62(秒)とか63(秒)とかで上がってくるし、少しレベルの高い馬なら60秒そこそこになることも多いですが、この馬に関しては少し時計を遅くして、大好きな右手前から左手前に替える練習を何度も繰り返してきた。その効果なのか、以前よりも走りのバランスが良くなってきましたし、落ち着きも出ているんです。有馬記念の時はゲート裏の集合で他の馬との距離をとっていたんですが、金鯱賞は近くに馬がいてもイレ込むことがなかった。精神的な面で違いが出ているのかもしれません」

 宝塚記念当日。仮にサートゥルナーリアが汗をかいていたとしても、それはノープロブレムだ。ただ、ダービー当日のようなイレ込みを見せていたとするなら割り引きは必要だろう。しかし、その可能性は限りなく低く、このメンバーなら楽勝してしまうはず。現在の同馬はそれほどの充実ぶりを見せている。