【安田記念・後記】完敗2着アーモンドアイの落とし穴

2020年06月08日 21時35分

まさかの事態に遭遇したルメール(右)と国枝調教師

 単オッズ1・3倍。多くの人が勝利を疑わなかった第70回安田記念(7日=東京芝1600メートル)の“主役”アーモンドアイは2着に敗れた。それも勝ち馬から2馬身半差の完敗だ。道悪(稍重)? 中2週? まさか他の7冠馬の呪縛? 史上初の芝GI・8勝目を目指した希代の名牝に何があったのだろうか。

 この日のアーモンドアイは、ヴァンドギャルドに続いて2頭目の“先入れ”で他馬の隊列より先に馬場入りした。有馬記念の9着大敗、ドバイへのカラ輸送を克服し、ノーステッキで楽勝した前走のヴィクトリアマイルより少しテンションは高めに映ったが、そこは無観客競馬の乾いた空気の中。少なくともレース前の気配が、能力をそがれるような状態とは誰もが想像しなかった。

 異変はスタート。反応が悪く、他馬より1馬身ほど遅れて3角通過は後ろから4頭目。それでも勝ったグランアレグリアを2馬身ほど前に見る位置で運び、直線は馬群の外へ。本来ならここから突き抜けるはずだが爆発的な脚を使えなかった。

 自身が駆使した上がりは出走馬3位の33秒9。勝ち馬(33秒7)ばかりか4着ノームコア(33秒8)にも劣った。有馬記念を除くと11戦中9戦で1位、2戦で2位の上がりを駆使した同馬には完敗を意味する。

 鞍上のルメールは「スタートで出遅れてしまった。その後はうまくリカバリーができて、グランアレグリアを見ながら直線を向くことができた。最後も脚は使っているけど、本来の彼女ならもっといい脚が使えたはず。勝ち馬もすごく強かったので仕方がない。コンディションは良かったと思う」。敗因にスタートを挙げながらも、いつものアーモンドアイの末脚ではなかったことに悔しさをにじませた。

 今回はデビュー以来、初となる前走から中2週の競馬。陣営は慎重に対処し、体調を見極めての出走表明だったが、やはり落とし穴があったようだ。

 国枝調教師は「表向きは何もなくても、短い期間で競馬を使った影響があったのかな。相手(グランアレグリア)も強かったとはいえ、捕らえられると思ったが、反応がひと息でインディチャンプをようやくかわした程度。(稍重の)馬場は影響なかったと思う。JC(2018年=1着)の時もそうだったけど、ゲートでフッと気持ちが上がる時があって、それで出遅れてしまう。今日も昨年ほどではなかったが、それでもね…」。

 スタート後に他馬と接触する致命的な不利のあった昨年の安田記念は直線で猛追しての3着。同じ敗戦でも“負けて強し”だったが、今年は様相が違った。

 昨年に続いての安田記念連敗。牡馬が交じった一線級が揃うマイルの距離では少々忙しい印象も受けた。負けるシーンを「想像しなかった」と話した同師は「仕方がない。また秋があるから」と前を向いた。この一戦でアーモンドアイの評価が落ちることは決してないが、競馬の難しさ、不確定さを自らの敗戦で知らしめる結果になった。