【安田記念】インディチャンプ 強敵がいてこそ「マイル王の本領」発揮

2020年06月03日 21時33分

“本番仕様”に仕上がってきたインディチャンプ

【安田記念(日曜=7日、東京芝1600メートル)栗東トレセン発秘話】ヴィクトリアマイルは大方の予想通りアーモンドアイの圧勝に終わり、当欄で「想定外の臨戦過程こそが、絶対女王の“蟻の一穴”に…」などと臆面もなく書いてしまった私は大恥をかいた。

 そんなド素人でも、直線を向く前に「こりゃ間違いなく勝つな」と確信するくらいの手応えで楽勝した“女王様”には恐れ入る。鞍上のルメールも抜け出してからは後続を振り返って確認するほどの余裕があり、まるで一頭だけレースではなく、調教をこなしていたかのよう。そんな印象を持ったのは私だけではあるまい。

 ゴールした瞬間に最初に感じたのは「これとそっくりな競馬、最近見なかったっけ?」という既視感だった。そう、マイラーズCでインディチャンプが見せた競馬も、まさに“調教みたいなレース”だった。

 安田記念で覇を競うであろうアーモンドアイとインディチャンプの前走内容が酷似していたように見えたことを、インディチャンプ担当の内徳厩務員にぶつけたところ、「アーモンドアイのほうが、より調教ぽかったけどね。でも比べたらダメだよ。そもそもGIとGIIでメンバーのレベルが違うんだから」と一蹴されてしまった。

 今にして思えば、マイラーズC前のインディチャンプ陣営には、始動戦の中山記念の敗戦(4着)もあり、あくまで安田記念に向けてのステップというムードが漂っていた(ような気がする)。懐疑的な目で見ていたこともあって、余計に衝撃を受けたのかも。実際、内徳厩務員も「確かに本番(安田記念)に向けてのひと叩きっていう調整だったよ」と認めている。いや、待てよ。“叩き台”であの走りを披露するのだから、やっぱりすごい馬なのだ。

 インディチャンプの特徴は短距離馬によく見られるものと一致する。にもかかわらず、そのスピードをマイルでも持続できてしまうところが、まさにただものではない。

「母(ウィルパワー)は典型的な短距離馬だったし、(インディチャンプの半妹)アウィルアウェイも短距離馬。そう考えると、よくマイルまで走っているよ。2歳の時から調教でもスピードのあるところを見せていたし、坂路での時計が調子のバロメーターになる馬でもあるからね」

 前走時は坂路で4ハロン50・8秒の猛時計をマークしているし、この中間も2週続けて51秒台をマーク。普段の調教にまたがっている生野助手も「本番に向けて、だいぶピリッとしてきました。去年から見ても本当に力をつけてきているし、いい状態で出せそうですね。マイルは最高に得意な距離。どんな馬とも、いい勝負ができるはず」と自信を隠さない。

 インディチャンプの唯一の弱点は、いわゆる「ソラを使う」こと。抜け出した途端にスピードを緩める=精神的な余裕を持ち過ぎてしまう点だ。生野助手は「だいぶ解消されてきている」とは言うものの、マイラーズCで手応えの割に後続を突き放せなかったのもこのためだろう。

 だが、今度の舞台はGI、それも最大のライバルは現役最強のアーモンドアイだ。おのずと悪癖を出すほど、余裕のある競馬にはならないだろう。その厳しい競馬こそが、インディチャンプの潜在能力を極限まで引き出す可能性だってあるのだ。

“絶対女王”と“令和のマイル王”の競演が、とんでもないスペクタクルを生み出すかも…。とにかく今からレースが待ち遠しい。