【ヴィクトリアM】ラヴズオンリーユーに備わったアーモンドアイ7冠の夢破る無限の潜在能力

2020年05月12日 21時32分

まだ底を見せていない天才少女のラヴズオンリーユー

【ヴィクトリアマイル(日曜=17日、東京芝1600メートル)特捜班】東京GI・5連戦の第2弾は古馬の女王決定戦・第15回ヴィクトリアマイルだが、今年は例年と様相が違っている。新型コロナウイルスの影響で3月のドバイ国際諸競走が開催中止。出走がかなわなかった実力馬がここへ矛先を向けたからだ。国内外でGI・6勝アーモンドアイが最大の注目馬だが、5戦4勝でまだ底を見せていない昨年のオークス馬ラヴズオンリーユーも魅力あふれる才媛。ひょっとして時代が動くかもしれない。

 無敗でのオークス戴冠。初めての敗戦となったエリザベス女王杯3着も、爪に不安が出たことで調整が遅れ、秋華賞を回避してのぶっつけ参戦であったことを思えば酌量の余地は十分にある。昨年、春・秋グランプリ制覇を成し遂げ、JRA賞年度代表馬にまで上りつめてターフを去った、厩舎の先輩リスグラシューを叩き上げの姉御肌と例えるなら、ラヴズオンリーユーは生まれついての天才少女といったイメージ。これまで数を使っていない分、その可能性は無限大。有馬記念9着からの復権を目指す現役最強馬アーモンドアイとの対決に興味は尽きない。

 ただし、わずかキャリア5戦という経験値の低さは、厳しい競り合いを強いられるGIで戦ううえでラヴズオンリーユーの抱える弱みともなり得る。2歳秋の京都・白菊賞以来のマイル参戦だ。

 本質的にベストの距離は? 半年ぶりで実戦の勘は? そもそも年長の馬を相手に通用する戦力を備えているのか?

 重箱の隅をつつくまでもなく、フタを開けるとそこには不安材料がびっしりと詰まっている。しかも今回は新型コロナウイルス禍の社会情勢において、ローテーションに狂いが生じた臨戦過程。GIドバイシーマクラシック(3月28日=芝2410メートル)に参戦のため、3月18日にドバイへ出国。現地で調整を進めているなかで開催中止が突然、決定された。アーモンドアイを含めた他の日本馬と同じく、レースに出走することなく日本に帰国。そしてヴィクトリアマイルへの出走が決定した。検疫を終えて4月29日に栗東トレセンへ帰厩。在厩3週間弱でいかにGⅠ仕様に仕上げるのか。そのあたりの不安を指揮官も隠すことはない。

「レースへ向けて一旦は仕上げて、それを緩めたところからの立ち上げになりますからね。限られた日数のなかでどれだけ状態を上げていけるのか…。やはり難しい」

 6日の栗東ウッドでの1週前追い切りの時計は5ハロン69・5秒。想定より軽くなってしまったことを明かすとともに、矢作調教師はその苦労を語る。ラスト11・5秒で僚馬2頭に先着の動きでさえ、全体に負荷をかける必要があった調整過程においては、誤差の範囲では済まされないということなのかもしれない。

 しかし、矢作調教師はこうも話す。「これまでも絶好調の状態で使えたのはオークスだけ。体重に関してもドバイで調整していた時は気にかけていたが、こちらに戻ってからは太いという感じもなく、とくに気にする必要はないと思う」

 2歳時に連勝後は、休養からの復帰が遅れて桜花賞出走はかなわなかった。「仕上がり途上」と同師も明言していたなかで忘れな草賞を勝利し、オークス戴冠が実現した。昨秋は爪に不安が出たことで秋華賞を回避し、ぶっつけでエリザベス女王杯に挑んで3着(0秒2差)という経緯もあった。なかなか体調が整わず、レース数を使えなくても崩れることなく能力を発揮してきた。それはポテンシャルの高さを端的に裏付けるものだ。

「以前と比べると硬さが目立つ印象もありますが、精神面では大人になってきた感じがします。マイルを走るなら、少しくらい硬さがあるくらいでも心配はないと思いますし、距離には対応してくれるとみています。あと1週間で調子を上げていきたいですね」と宮内助手は、限られた時間内で最善を尽くす決意を示した。

 世界中が不自由な暮らしを強いられている。世界へ打って出ることが当たり前となった日本馬たちにとっても、レースの選択肢が狭まることでの苦労は尽きないはず。しかし、その余波で〝副産物〟も生まれた。夢の対決が国内の競馬でいきなり実現したのだ。ドバイからの帰国組の最終調整に気を配りつつ、その対戦を心ゆくまで楽しむことこそが真の競馬ファンの姿であり、与えられた特権ではないだろうか。