【NHKマイルC】東京千六が最適舞台の「千八タイプ」マイラーを探せ!

2020年05月08日 21時01分

イメージに反して中距離もこなせそうなタイセイビジョン

【NHKマイルC(日曜=10日、東京芝1600メートル)“智将”中村均元調教師の獣医学的馬体評定】マイラーとは1600メートル前後の距離を得意とする馬の総称です。その理想の体形は以下の通りです。

★顔と頭=身体の大きさと相応している
★首=適度に太く、胴との付け根も太い
★脚=長さは極端でなければ長短問わず、前腕部が発達している
★つなぎ=適度な長さがあり、硬めであっても強靭な弾力性がある
★肩=傾斜はやや厳しく(55度)、肩や上腕の筋肉が発達し、やや厚みもある
★背中=短めで背筋が発達し、やや厚めで強力な伸縮性がある
★腹=やや丸みのあるふっくらとした長めの腹袋で、かつ引き締まっている
★後躯=腰から大腿にかけての筋肉が非常に発達し、厚みもたっぷりある。腰から臀部、そして飛節にかけての曲線はやや下がり気味(押しトモ)
★飛節=真っすぐが理想だが、少し曲飛であっても伸縮性があればよし

 だが、中にはマイルよりやや短めの距離に適した馬もいますし、逆にマイルより少し長いぐらいのほうがいい馬もいます。当然、マイルがピッタリというタイプもいるわけで、そんな細かいマイラー内での“仕分け”がレースにおいての勝敗を分けることになりますし、馬券検討にも欠かせません。これが今回のテーマです。そこで、ここでは便宜的にマイラーの分類を以下の3つに定義します。

(1)1400メートルタイプ
(2)ジャストタイプ
(3)1800メートルタイプ

 今週のNHKマイルCは、その舞台が東京なのを考慮しなければなりません。同じマイル戦でも他の競馬場とは大きく違いがあって、直線が非常に長く(525・9メートル)、半ばに勾配(高低差2・7メートル)がある。逃げ、先行馬には厳しい舞台で、距離適性もマイルがピッタリというよりは、100メートル、いや200メートルぐらい長い距離を得意とする馬のほうがいい。つまり、(3)の「1800メートルタイプ」を探したいわけです。ではピックアップした3頭を順に解説していきます。

 サトノインプレッサはいかにもマイラーという(2)のジャストタイプの体形ですね。頭は程よい大きさですが、首は頭、胴の付け根ともに太くて、たくましい。肩の傾斜はやや急(57度)で三角筋や上腕三頭筋が厚く発達して迫力があります。背中はやや厚みのある背筋が発達しているので、柔らかくて伸縮性がある。腹回りもふっくらして、脾腹(脇腹の部分)も薄くはなく、実にしっかりしています。

 後躯の形は腰から臀部にかけてやや下がり気味の“押しトモ”で、チーターや猫のように股関節が柔らかいのが特徴的。こういうタイプは前に深く入り、後ろに強く蹴りやすいのです。臀部の大腿二頭筋の盛り上がりと厚みもうかがえ、飛節も真っすぐに伸びています。一般的にマイラーはやや硬めの力強いフットワークをするものですが、この馬は体形から柔らかくて軽い、かつ大きなフットワークをします。

 一方、牝馬の中で代表マイラーと言えそうなのがレシステンシアです。牝馬らしい美しさがありますが、キリッとした目に根元の太い首を持ち、牡馬に負けない馬格を誇ります。肩の傾斜はかなり厳しい角度(58度)ですね。肩関節と背中の柔らかさ、そして後躯の強さが大きな武器です。前肢は最初の出は悪いのですが、ピッチが速くて素早い先行力を武器に加速し始めると、先に挙げた3つの武器が前肢の伸長を十分に補うのです。

 特に後躯の蹴りは一流牡馬も顔負け。身体すべてを宙に浮かばせて、前に前にと大きなストライドでそれを運ぶ。長躯短背で、特に後躯の3つの臀筋と大腿二頭筋の発達がすごい。これも(2)のジャストタイプ。世代屈指のマイラーです。

 実は最後の登場になるタイセイビジョンこそが(3)の1800メートルタイプとみています。2歳時は短距離を中心に使っていた印象もあり、(1)の1400メートルタイプと思われがちですが、この馬こそが(3)の条件に合致します。

 前躯はマイラーらしい肩の傾斜(55度)でややきつく、肩の筋肉は三角筋も上腕三頭筋もよく発達しています。前肢の出は少し足りないのですが、肩関節が柔らかく、かき込み自体は強い。背も短く柔らかいのですが、腹は長いけれども、それほど太くはありません。いわばステイヤーのように細く、脾腹に向かってなだらかに切れ上がっています。

 後躯の形もステイヤーに似ていて、臀部の厚みや筋肉量はマイラーの割に発達していません。ただ、強靱そうだというのは分かります。おそらく大腿二頭筋に加え、浅、中、深臀筋の強さもあるのでしょう。これが前肢の伸び不足を補って、背中の柔らかみと後躯全体の強さで押し出しているのでは。飛節も真っすぐで、つなぎが特に強靱そうに映ります。

 それゆえ総合的にはマイルを超えても十分対応できそう…すなわち、東京マイルの舞台に適したタイプとなります。

☆プロフィル=なかむら・ひとし 1948年9月13日生まれ、京都府出身。麻布大学獣医学部卒業後、71年に父親の中村覚之助厩舎の厩務員になる。77年に28歳の若さで調教師免許を取得。厩舎開業後はトウカイローマン(84年オークス)、マイネルマックス(96年朝日杯3歳S)、ビートブラック(2012年天皇賞・春)でGI制覇を達成。また04年から10年まで日本調教師会の会長を務める。好きな戦国武将は石田三成。