【天皇賞・春=後記】フィエールマンを連覇に導いたルメールが明かしたスタート直後の“十数秒の攻防”

2020年05月04日 21時35分

史上5頭目の連覇を達成したフィエールマン

 3日、京都競馬場で行われた第161回GI天皇賞・春(4歳上オープン、芝外3200メートル)は、1番人気のフィエールマン(牡5・手塚)がハナ差の接戦を制し、史上5頭目の連覇を成し遂げた。騎乗したルメールは2018年の天皇賞・秋(レイデオロ)から天皇賞4連勝という史上初の快挙を達成。名実ともにJRAトップジョッキーとなった彼の手綱さばきを改めて振り返り、その偉業の要因を探りたい。

 長距離戦は騎手の腕が最大限に発揮されるレースだ。そして、無観客で行われた今年はフィエールマンに騎乗したルメールの確かな技術を再認識するレースだったと言えるだろう。

 もちろん、昨年の覇者であり、1番人気に支持されたうえでの勝利は力量通りという見方をされて当然だ。11番人気だった2着馬スティッフェリオとのハナ差は、むしろ苦戦のイメージすら抱かせるものかもしれない。

 しかし、京都の外回り3200メートルが外枠不利の設定であり、フルゲートではなかったとはいえ、今年のフィエールマンは大外の8枠14番だった。

「正直、ちょっと嫌だった」と語ったルメールの言葉に嘘がないことは、無理に位置を取るような愚行をせず、逆に少しずつポジションを下げたスタート直後の彼のアクションに証明されている。

「京都の3200メートルは最初のコーナーがすぐに来る。いいスタートを切ってしまうとずっと外を回ることになります。そのリスクは避けたかったので、壁になるところを探しました」と“十数秒の攻防”をこう振り返ったルメール。

 出遅れを危惧されていたキセキの好スタートに実況が声を上げていた時、直前にいたシルヴァンシャーを壁に使うため、ルメールはゆっくりと手綱を引いていた。折り合いをつけ、距離ロスを最小限にして直線を迎えた全般のレースぶりは、この完璧だった初動によるところが大きい。勝負はスタート直後に決まっていたのだ。

 では、なぜ着差が「ハナ」なのか? ルメール自身も「楽勝と思いました」と抜群の手応えで直線を向いたことを明かしているが、続けて「休み明けでトップフォームではなかったのかもしれません。最後は必ずいい脚を使ってくれる馬ですから勝てましたが」と有馬記念(4着)以来だった臨戦過程の影響を示唆した。

 一方、見守った手塚調教師は「3200メートルのGIを連覇していますが、もう少し短い距離のほうが切れる脚を使えるかもしれません」と長距離GI・3勝の実績に反したフィエールマンの距離適性に言及した。

 春の最大目標を終えた同馬の今後は未定だが、オーナーサイドは宝塚記念(6月28日=阪神芝内2200メートル)への出走を表明。今後はトレーナーの言う“ベストディスタンス”での戦いが濃厚で、さらなるタイトルの上積みが期待できそうだ。