【天皇賞・春】通算14勝“盾の魔術師”武豊がキセキの出遅れグセ矯正

2020年04月29日 21時33分

15日のゲート試験で初コンビとは思えない“人馬一体”の呼吸を見せた武豊とキセキ

【天皇賞・春(日曜=5月3日、京都芝外3200メートル)栗東トレセン発秘話】第161回天皇賞・春の最大の見せ場は、ゲートが開く瞬間になるのかもしれない。出遅れが続き、リズムを崩したあの実力馬の新パートナーに指名されたのは春8勝+秋6勝の「天皇賞14勝男」武豊。すでに“キセキのツボ”をつかんだ男が、平成だけでなく、この令和もマジックを魅せる――。

「勝負の世界に“タラレバ”は禁物」とはよく言われるが、時には“タラレバ”で違う未来を想像するのも楽しいものだ。

 例えば昨秋のラグビーW杯。準々決勝の日本対南アフリカ戦の前半に、南アフリカの1番が危険なタックルでイエローカード(10分間の退出処分)となった。この判定はゲーム後に日本代表監督が「これまでのゲームならレッドカード(退場処分)が出されていた」と発言したように、けっこう微妙なもの。もしあの時点で1番が退場していたら、ゲームは、そしてW杯の行方はどうなっていただろうか?

 天皇賞・春の前哨戦、阪神大賞典もそんな“タラレバ”を想像したくなるようなレースだった。1番人気に推されたキセキが痛恨の出遅れ。その後に脚を使って、番手を確保したものの、結局は最後にスタミナ切れを起こしてしまい…。

 それでも勝ち馬ユーキャンスマイルとの着差はわずかに0秒6。キセキがゲートで固まっていた時間をレース映像を見ながら計測してみたが、どう短く見積もっても1秒前後はある。おまけにゲートを出てから大きく左に旋回していた。

 まともにスタートを切っていたなら、ぶっちぎっていたのでは。そんな想像(妄想?)を角居厩舎のスポークスマン、小滝助手にぶつけてみると「確かによくあそこまで残れたな、という感じですね。ゲートさえ普通に出てくれていれば…」と苦笑交じりに同意してくれた。

「4、5歳時には逃げも打てていたくらいで、嫌がるそぶりもなかったんですが、だんだんと(ゲートで)渋るようになってきまして…。結果、有馬記念(5着)、阪神大賞典(7着)と2走続けて大きく出遅れてしまいました」

 突然の異変に戸惑っているようだが、もちろん、陣営も手をこまねいているだけではない。スタートのうまさには定評のある名手・武豊を鞍上に配する、まさに最善の一手を打ってきた。

「15日にゲート再審査も合格したので、そこから2週続けて(武豊に)乗ってもらい、感覚をつかんでもらいました。先週のウッドでの追い切りでは、緩急もついていたし、反応良く最後までしっかり伸びた。言うことなしの内容でしたね。しっかりと“キセキのツボ”が伝わっていると思います」

 そう口にした小滝助手は天皇賞・春8勝を誇る名手の手腕に祈るような期待を込める。

「あとはスタートを決めてさえくれれば…。いいスタートじゃなくていい。五分のスタートでいいんです」

 2017年菊花賞勝ちに、18年ジャパンC、19年大阪杯、宝塚記念2着…。純粋な走力が現役トップクラスであることは言うまでもない。今年の天皇賞・春は、武豊=キセキのスタートいかんによって、勝負の行方が大きく左右されることだけは間違いなかろう。