【赤城真理子の聖地巡礼】“梅田厩舎の誇り”天国のアドマイヤラクティへ

2020年04月24日 21時00分

アドマイヤラクティが眠る墓前に手を合わせる赤城記者

【赤城真理子の聖地巡礼】私の知らない多くの名馬に会うこと、取材中に名前を聞く厩舎ゆかりの馬たちと対面することが、今回の“聖地巡礼”の目的でした。

 マヤノトップガンにメジロドーベル、カレンブラックヒル、ケイアイガーベラ…。誰かの話や紙面上でしか知らなかった彼、彼女たちを目の前にした時の感動――。いつの間にか競馬が大好きになっていたんだなあとハッとさせられるくらい、心が震える出会いでした。ですが、もうひとつ、大切で絶対にかなえたい目的が。それは梅田厩舎の看板馬だったアドマイヤラクティのお墓参りをすることだったんです。

 私はラクティの現役時代の姿を知りません。でも、現役馬と同じくらい、もしくはそれ以上に彼の話を聞いてきました。

「ラクティはな、ウチの厩舎に初めてのGI勝利をプレゼントしてくれた馬やねん。GIっていっても日本のじゃないで。ハードな海外遠征をして、オーストラリア(2014年コーフィールドC)で勝ってくれたんや」

 彼のことを語るときの梅田調教師はいつも誇らしげ。厩舎の大仲(休憩室)に飾ってあるゼッケン、厩舎スタッフのユニホームに入っている「ADMIRE RAKTI」の刺しゅうは、彼が現在も愛され続ける、大切な存在であることを示しています。

 遠征の帯同馬だったアドマイヤイナズマにかみつかれている衝撃的な写真に「なんで喧嘩してるんですか!?」と尋ねると、梅田調教師は「同じ牝馬に恋しちゃってな。ラクティが積極的にアピールするもんだからイナズマがキレた」と苦笑い。そんなおちゃめなエピソードも聞いていたからかな? 会ったこともないラクティが現在も梅田厩舎に在籍しているような感覚がして、“もうこの世にいないんだ”という実感が湧かなかったんです。

 でも、梅田調教師には「いつかラクティのお墓参りに行ってみてよ。オーストラリアと北海道の2か所にあるんやけど、北海道のもすごいんやで。ダービー馬アドマイヤベガの隣にあるんやから」とも言われていました。今回の聖地巡礼こそ、それを実現する機会だったのです。

 社台スタリオンステーションの一角にある数々の名馬たちの墓石の名前を確認しながら歩いていると、その中にありました。アドマイヤベガのお墓の横にアドマイヤラクティの文字が。私はそこで初めて、ラクティが天国の馬であることを感じたんです。これまでに見せてもらったラクティの生き生きとした写真やレース映像。なのに、目の前の墓石には「ADMIRE RAKTI 2008―2014」の文字。突然、襲ってきた悲しみに私はしばらく動けませんでした。

 その時間がちょっと長かったからでしょうか。私を待ってくれていた社台SSのスタッフさんが「もしかして梅田厩舎の担当記者さんですか? たぶん厩舎の方だと思うんですけど、いつも長い時間、ラクティのお墓の前にいらっしゃる方がいますよ。今年も含めて毎年来られてます」と教えてくれました。

 担当の古味助手かな? 栗東に戻ってからご本人に聞いてみると「僕は一度しか行けていないんです。まだ、どうしても…。何となくだけど、鹿戸さんじゃないかと思います」の返答が。そうですよね。まだラクティが亡くなって5年余り――。簡単に消化できるはずありませんよね。

 毎年、ラクティの墓参りを続けていたのは攻め専の鹿戸助手。でも、その事実は梅田調教師さえも知らないことでした。古味助手とはまた違う形でラクティのことを思い続けているのかな…。聖地巡礼からはちょっと脱線しちゃうけど、馬と関係者のつながりについて、来週のコラムで深く取り上げたいと思います。

 私がラクティのお墓を訪問した日。それは、図らずも彼の命日の翌日でした。