【高松宮記念・後記】繰り上がりGI初制覇モズスーパーフレア 音無調教師の本音「複雑ではあるよ」

2020年03月30日 21時31分

クリノガウディー(左奥)の進路妨害で1着となったモズスーパーフレア(左手前)

 戦後初の無観客GIとして行われた29日の第50回高松宮記念(中京芝1200メートル)は、1位入線のクリノガウディーが最後の直線で内側に斜行。4着に降着した結果、2位入線のモズスーパーフレア(牝5・音無)が繰り上がりでGI初制覇という仰天の結末に終わった。閉塞感が漂う現在の世界情勢がスライドしたかのようなゴール前の事象――。ファンが目にできなかった舞台裏をリポートする。

 1位入線のクリノガウディーがゴール前で内側に斜行。2位入線モズスーパーフレア、4位入線ダイアトニックの進路を妨害したため、4着への降着処分を受けた。ゴール前のシーンを文字で説明すれば、これほどまでに簡素なものだ。しかし、関係者の顔は総じて晴れず、感情の整理に頭が追いつかない様子。レース後の検量室前はGI後とは思えない重苦しい雰囲気に包まれていた。

「とても複雑です。自分の中で整理ができず、なかなか言葉が出てこない」とは直接の不利を受けたダイアトニックの北村友。加害者だった前回の阪急杯(2位入線→3着降着)から一転して、今回は被害者の立場へ。この言葉さえも何秒間かの沈黙の後、振り絞るようにして出たものだ。

 勝者であるモズスーパーフレアの音無調教師も同様。弟子・松若の記念すべきGI初制覇に本来なら喜びを爆発させたいところ。実際に会見場では笑顔を振りまいた。だが、それはあくまで表向きで「(北村)友一の馬だけでなく、ウチの馬も不利を受けている。降着になるべきものかもしれないけど、複雑ではあるよ」が本音。

 本来ならクリノガウディーを管理する藤沢則調教師にとっては初の、騎乗した和田も音無厩舎が管理するミッキーロケット(2018年宝塚記念)以来のGI勝利になるはずだったレース。どちらも人柄の良さで知られる人物だけに手放しで喜ぶ気持ちになれなかったのだろう。

 初の無観客で行われたGIはファンファーレへの反応もなければ、直線での喧騒もない。あまりにも寂しい一戦。ファンあっての競馬を改めて思い知らされた。だが、そんなセンチな感情さえも追いやってしまった今回の結末はあまりにショッキング。感情に左右されない判断を下した裁決委員を評価する一方で、来週のGI大阪杯はこうならないことを祈るばかり。勝者が勝者らしくたたえられる形を期待する。

 最後に勝者モズスーパーフレアに対する賛辞を。得意の中山で行われるオーシャンSをスキップした調整過程が功を奏したのは間違いないが、一度はのみ込まれそうになった状況からのカムバックは底力があればこそ。もちろん、騎乗した松若が外枠に負けず、積極的な姿勢を貫いたことも大きかった。

「馬場状態が少し気になりましたが、スタートだけはしっかり決めようと思っていました。道中の感じも良かったですし、本当に最後まで頑張ってくれた。このような形での勝利ですけど、GIを勝てたことはうれしく思います」と松若。スプリントGI連覇を目指す秋はすっきりとした形での勝利を期待したい。