【JRA無観客競馬】中村均元JRA調教師が楽しみ方緊急提言 こんな時こそ前向きに

2020年02月28日 16時40分

緊急提言した中村均元JRA調教師

 コロナ禍はついに中央競馬にも…。「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を受け、29日から中山、阪神、中京競馬場3場の「無観客開催」がスタートする。戦後初の緊急事態はいつまで続く? 関係者からさまざまな声が上がる中で、「見えない出口を追い求めても仕方がない。今、ここにある新たな形の競馬を楽しもうではないか」と提言したのは本紙専属競馬評論家の中村均元JRA調教師。長らく調教師会会長の重責を担った男だからこそ、その言葉には圧倒的な説得力が宿る――。

 最初の問題は「無観客競馬」をいつまで続ける必要があるのかということです。ちょっと話がズレると思われるかもしれませんが、今回の新型コロナウイルスの流行と状況が似ているなと思ったのは、1971年に日本で初めて「馬インフルエンザ」が流行した時のことです。

 人と馬、かかった対象は違いますが、当時も未知のウイルスでしたから、ワクチンなんてものはないし、検査キットも検査方法も確立されていない。有効な治療薬も当然、ありませんでした。だから流行した関東の馬は壊滅的な状況になったんです。結果的に2か月以上も関東の開催は中止になりました。

 ワクチン、治療薬が確立されていないのは今回の新型コロナウイルスも同じ。流行が収まるのを待つ間、無観客で競馬を行うのであれば、その期間は相当なものになりかねないわけですが…。一方で関西の開催は通常通り行えたんです。なぜかというと、競馬以外は放牧も含め、トレセンからの出入りを完全にシャットアウトしたからです。

 もちろん、人はそうもいかない。今回のように競馬場などのイベントを無観客にしても、出かける人、交通機関を利用する人はいますからね。あくまで今後の様子を見ながらということで、JRAも「当面の間」という表現にしたのでしょう。必要以上に悲観する必要はありませんが、今後の見通しについては不透明な部分が多いと言わざるを得ません。

 ただ、こういった事態を迎えた以上は、今までに経験したことのない“新たな競馬”を、前向きに捉えていくことも必要だと思います。

 無観客で競馬をすることで、レース自体に何か違いが出るとすれば、まず馬にとっては、いいことなのかもしれません。サラブレッドは競馬場に行けば、歓声や熱気で興奮してしまうものです。中には普段通りの力を発揮できない馬も…。「イレ込んで力を発揮できなかった」といったキュウ舎談話はこのケースに当たります。そうした馬が落ち着いてレースに向かえれば、より純度の高い競馬が楽しめるわけです。

 騎手についても同様なことが言えるかもしれません。ひとたび、レースにいけば勝とうという気持ちひとつでやっていますから、ちょっと寂しいなとは思っても、スタートしてしまえば関係ないでしょう。それどころか、大勢のファンがいない中での競馬がリラックス効果を生み、変な力みを取ってくれることも考えられます。

「無観客競馬」になることで、人馬がどう変わるのか。そこを楽しもうではありませんか。

 土曜の阪神では当初の予定通り四位騎手が引退式を行うとか。たとえファンがその場に立ち会えなくても、皆さんが四位騎手の最後の姿を応援してくれることでしょう。映像で引退式の様子は今まで以上にファンに提供してあげたほうがいいでしょうね。
 私が調教師を辞める最後の日は、引退式にたくさんの方が見に来られて、花束もいっぱい頂きましたし、100人ぐらいの方にサインも頼まれたんです。こんなにファンに応援してもらっていたんだとすごく感謝したのを覚えています。

 そういう“ファンの声”が今後しばらく競馬場で聞けなくなってしまうのは確かに残念ですが…。「無観客競馬」を経験した後は、世界中の一流ジョッキーが「ナンバーワンだ」と口を揃える、日本のファンの声援のすごさが今までより一層、注目されるきっかけになるかもしれません。