【格付け委員会・古馬中距離部門】叩き上げ女王リスグラシュー「65」場数踏んだ“すごみ”文句なし

2020年02月06日 21時30分

【松島良都記者の2019年格付け委員会=古馬中距離部門】ウオッカ(2008、09年)、ブエナビスタ(10年)、ジェンティルドンナ(12、14年)、アーモンドアイ(18年)、そして、19年はリスグラシュー。05~19年の15年間でJRA賞年度代表馬は牝馬が7回獲得。もはや牡牝の差はなく、むしろ牝馬上位の時代を迎えていると言っていいかもしれない。

 リスグラシューは豪コックスプレートを含む年間GI・3勝。春秋グランプリは3、5馬身差の圧勝だった。天皇賞、ジャパンCには不出走でも戦績に不足はない。古馬中長距離部門のトップになる65キロ(2300メートル超)を獲得して前記の名牝に肩を並べた。

 もっとも、これまでの歴史的名牝と比べると明らかに“異質”。2歳時から頭角を現していたとはいえ、GI初勝利は4歳秋のエリザベス女王杯。冒頭の4頭が2、3歳時に名牝の評価を得ていたことを思えば、かなりの遅咲き。牝馬としては珍しい叩き上げの王者だ。それだけに“天才肌”のチャンピオンであるアーモンドアイとの明暗が分かれた有馬記念は、様々なことを考えさせられた。ノーステッキで5馬身差の圧勝は驚異的。多くのキャリアを積んで培ってきた強さには、ほかにない“すごみ”があった。

 これは、凱旋門賞を勝ったヴァルトガイストにも通じるものがあるように思う。というのも、こちらも5歳、21戦目の大金星(それまでGI勝ちは3つ)。欧州の半年の競馬シーズンでも3歳=5戦、4歳=8戦、5歳=4戦(凱旋門賞前まで)とコンスタントに実戦を使われ、力をつけてきた。そうしたキャリアに裏打ちされた強さというのは、どういう状況でも持てる力をほぼフルに発揮できるのだろう。だからこそ、重馬場でわずかに隙の生じたエネイブルを捕らえることができた。

 無論、最終的には馬の資質がモノをいうことも否定しないが、こうした“千載一遇”?のチャンスをモノにするには、やはり場数を踏むことも必要で、実戦でしか得られない物も多いということだ。近年は海外に遠征するケースも多く、一流馬の年間出走数が減少しつつあるが、有馬記念の結果は、この傾向に一石を投じたと個人的には感じている。

 一方、有馬記念で初の大敗を喫したアーモンドアイは63キロ。ドバイターフ、天皇賞・秋と2つのタイトルを加えた点を評価して~2300メートルでは65キロとしたが、前年からの期待の大きさからすれば、物足りなかった。何より年間4走はマイナス材料。復権のかかった今シーズンは勝利に加えて、競馬に対する貢献度という点でも注目したい。

 同じく牝馬のラッキーライラック(59&58キロ)も、この路線のカギを握る一頭。メンバーが手薄だったエリザベス女王杯Vは当然としても、続く香港ヴァーズでも2着に健闘。完全復調を印象付けた。今年は牡馬相手でも、さらなる飛躍の可能性を秘めている。

 牝馬勢の頑張りに対して牡馬は低調。スワーヴリチャード(61&62キロ)がジャパンCを制したといっても、メンバーの質は有馬記念より下だった。フィエールマン(58&62・5キロ)が勝った天皇賞・春も同様で、ブラストワンピース(58・5&62・5キロ)、レイデオロ(62&62キロ)、キセキ(59・5&61キロ)はパフォーマンスそのものが低下。不本意なシーズンになった。クイーンエリザベスII世C、香港Cを制して急上昇したウインブライト(~2300メートル以下で56→61キロ)を除けば収穫は少なく、勢いのある明け4歳勢との戦いでは苦戦を強いられることになるかもしれない。