【有馬記念・後記】5馬身差圧勝リスグラシュー レーンは胸中複雑「世界一になれる可能性もあるから」

2019年12月23日 21時32分

喜びを爆発させるレーンと、リスグラシューの労をねぎらう矢作調教師

「史上最高のグランプリ」との前評判だった22日のGI第64回有馬記念(中山芝内2500メートル)に、とんでもない結末が待っていた。単オッズ1・5倍の断然人気だったアーモンドアイ(牝4・国枝)が9着に沈み、一方でここが引退レースのリスグラシュー(牝5・矢作)が5馬身差の快勝。いったい何が明暗を分けたのか? そして今年の年度代表馬(記者投票)の行方は?

 直線は想像を超えた独走だった。それでもゴールした瞬間をレーンは「ハッピーな気持ちと残念な気持ちがミックスした。GIで勝つと次のレースを楽しみに思うが、引退すると聞いていて最後の騎乗になるのかと…。自分がこれまでに騎乗した中では一番の馬。宝塚記念、コックスプレートと乗るたびに成長して、今回さらにレベルアップしていた。(この先)世界一になれる可能性もあるから」と振り返った。

 鞍上が「位置取りよりリズムを重視した」という前半は、内ラチ沿いをがっちりとキープ。直線入り口ではあり余る手応えで一気に馬群の外に持ち出し、先に抜け出しを図ったサートゥルナーリアを一瞬でかわした。

「手応えが良過ぎて、いいタイミングでスペースを与えないと、と思った。あとは馬の能力に任せた。前の馬をマークしていたのでかわした瞬間に(勝てる)自信が持てた。後ろから差されることはないだろうと」

 レーンが抜群の判断で最高のエスコートをしたのは明白だった。

「前走のコックスプレートの後は有馬記念を目標にして、馬が毎日成長しているのを感じていた。むしろ体を絞るのが大変だったから先週、今週と併せ馬でしっかり追って、悔いの残らない仕上げをした。栗東を出る時が488キロで今日が468キロ。自分でしっかり体をつくってくれた」とは矢作調教師。同師にとっては初めての有馬記念出走での勝利。「この馬の力を一番引き出せるのはレーン」とJRAに特例による1日限定免許を申請し、今回の騎乗につなげた。468キロはデビュー以来の最高馬体重。人間側の知恵と技術と努力に、リスグラシューが最高の結果で応えた。

 引退を表明していた同馬には、当然ながら惜しむ声が聞こえてくる。(有)キャロットファームの秋田博章社長は「(来春の)ドバイを使ってからだと産駒の生まれが遅くなるし、競走でのストレスが悪影響を及ぼす可能性がある。それが本当にいいのかと考えて、今回(引退)の決断に至った。年度代表馬の可能性も出てきたので、いい花道ができたのでは」と説明。クラブの規定では来年3月いっぱいの現役続行も可能だが、撤回される可能性は低い。

 レース後は福島県のノーザンファーム天栄に移動。年度代表馬に選出なら引退式(場所未定)も行う予定で、最初の花婿はロードカナロアが濃厚だ。もっと強くなる姿を見たい気持ちと、夢の続きは子供に託したい気持ち…2つの気持ちが交錯するファンは多いに違いない。

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