【有馬記念】アーモンドアイ 国枝調教師と座談会「天皇賞・秋は八分のデキだった!体温も距離もコースも問題ない」

2019年12月19日 21時34分

まだ底が見えないアーモンドアイ。国枝調教師は今回も絶大な信頼を寄せる

【有馬記念(22日=日曜、中山芝内2500メートル)国枝栄調教師と特別座談会】空前の豪華メンバーが揃った第64回有馬記念。中でも注目は現役最強馬アーモンドアイの緊急参戦だろう。出走表明を受け、本紙は急きょ国枝栄調教師(64)にオファーを出し特別座談会をセッティング。月曜発行紙面「私たちはこう見た」でおなじみ馬匠・渡辺薫記者、競馬評論家・柏木集保氏、「だいじょばない」の稲富菜穂を交え、国枝師の胸中に迫った――。

 稲富:みなさん、本日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。月曜発行紙面「私たちはこう見た」でおなじみ渡辺薫さん、柏木集保さんに加え、今回はスペシャルゲストに国枝栄調教師に来ていただきました。よろしくお願いしますっっ!

 国枝調教師:よろしく。俺も渡辺さんや柏木さんと久々にこうやって同席できてうれしいよ。

 稲富:早速ですがアーモンドアイの気になる状態面をお聞きしましょう。香港遠征を回避したということで、心配しているファンの方もいると思います。

 国枝:まあ、そうやってケチをつけたい人もいるだろうけど…。正直、順調そのものだよ。熱発(※注)といっても普段より少し体温が高かっただけで、調教を休んだのも1日だけ。翌週が香港ではなく、日本の競馬だったらおそらくレースに使っていたと思う。それくらいのレベルだよね。ルメールが乗った1週前追い切りも実にスムーズ。落ち着きが出たというか、馬にムダがなくなってきたよ。この前の天皇賞・秋は大体八分くらいのデキ。確実に今回の方がいいね(※注=馬の平熱は38度ほどで疲労や輸送などによって引き起こされ、およそ1度程度上がれば熱発と呼ばれる。人でいう発熱。今回のアーモンドアイは平熱が38度2分で38度6分まで上がっただけで微熱といえる)。

 稲富:うわ…。全く不安がないじゃないですか! 距離やコースに関してはいかがですか?

 国枝:距離に関しては昨年のジャパンCで問題ないことが証明されていると思う。決してアラアラになりながら勝ったわけじゃないからね。コースに関しても小回りの秋華賞で勝っている。スタートさえ決めてくれれば、何の問題もないと思ってるんだけど。

 柏木:う~ん…。これが何よりの強みですよね。調教師も、そしてルメール騎手も敵がいないと思ってる。これはきっと馬にも伝わるでしょう。

 稲富:アーモンドアイは本当にすごい馬ですけど、先生はいつごろからこんなにすごくなると思いましたか?

 国枝:デビュー前からだよ。初めての15―15(1ハロン15秒のキャンター)を見て「この馬すごい!!」って思った。身のこなしが全然違うんだもん。「こんな馬がいるんだな~」って。その後も普通は相手が強くなるにつれて「こんなもんかな」って思う壁が見えてくるんだけど、アーモンドアイはそれが一度もない。むしろ相手が強くなるたびに「えっ!?」って驚かされているよ。これまでレースでは2回負けてるけど、ともに敗因はハッキリしていてそれぞれ力負けではない。そもそも目一杯に追われたのだって、安田記念(3着)の1回きりだしね。

 柏木:さすがにもう上り詰めた感じはあります?

 国枝:いやあ、まだ(上に)行くんじゃない? 一番怖いのはだんだんと馬に余裕がなくなってプツンと切れちゃうことなんだけど、さっきも言ったようにここにきて落ち着きが出てきたからね。

 渡辺:こういう話を聞くと、アーモンドアイが55キロで出てくるなんて反則に思えてくるな。60キロくらい背負わせないと(笑い)。まあ冗談はともかく、国枝さんが言った通り、スタートさえ決まればおのずと結果はついてきそうだ。

 柏木:オジさんたちはスケベなんで、直前になったら本命にしない可能性はありますけど(笑い)。さて渡辺さん、ほかに注目してる馬はいます?

 渡辺:アエロリットがいてキセキもいる。ある程度ペースが流れると読むなら、サートゥルナーリアの巻き返しもあるのかなと。同じ中山で行われた皐月賞勝ちはインパクトがあったから。

 柏木:他にもレーン騎手が駆けつけるリスグラシューや、武豊騎手のワールドプレミア。ジャパンCを制したスワーヴリチャードもいますし、ギリギリまでしっかりと吟味しましょう。

 稲富:いや~、本当に楽しみになってきましたっっ! それでは国枝先生からレースへ向けての意気込みを。

 国枝:個人的な話になるけど、かつてマツリダゴッホで有馬記念を勝った翌年のこと。主役の立場として始動戦の日経賞(2008年)を勝たせてもらったんだけど、4コーナーで先頭に立つゴッホの姿がターフビジョンで大映しになったんだよね。その時に本当に感動したんだ。だから今回もアーモンドアイにはそういう主役らしいレースをしてもらいたい。競馬場や場外に来たファンに「見にきて良かった」と思ってもらえるような走りを。

 稲富:ちなみにお三方はいつからのお知り合いなんですか?

 国枝:かなり古いよ。

 渡辺:まだ国枝さんが山崎(彰義)厩舎の助手だったんだよな。

 稲富:柏木さんは国枝先生とは?

 柏木:僕も古いですよ。昔ウチの会社(日刊競馬)が馬を持っていて、山崎厩舎に預けていた。だから、国枝さんが助手の時から知っています。でもまさかここまでの成績を残す調教師になるとは…(笑い)。

 稲富:有馬記念の話に戻しましょう。

 渡辺:その前に俺のデータを発表させてくれ。国枝さんは開業30年目なんだけど、意外にも有馬記念には延べ5頭しか出走していないんだ。でも1勝を挙げている。

 国枝 マツリダゴッホ(07年)だ。

 渡辺:現役で一番勝っているのは池江調教師で、延べ27頭を出して4勝。藤沢(和)さんは延べ17頭を出して3勝…。

 柏木:国枝さんが一番効率がいいですね。

 渡辺:もうひとつ国枝厩舎の特徴を挙げると、アパパネ(GI・5勝)や、ピンクカメオ(NHKマイルC)など牝馬に強い。

 柏木:つまり、今年の有馬記念はアーモンドアイで仕方ないってデータですか(笑い)。

 国枝:アハハ…。でもそれって金子(真人オーナー)さんがすごいってことじゃないの? アパパネもピンクカメオも、ほかにもウチにいたブラックホークだって金子さんの馬なんだから。

 稲富:確かに!

 渡辺:そういう見方もあるか(笑い)。しかし有馬記念も昔とは随分と様相が違うよな。昔は本当のお祭りだったから。海外競馬はもちろん、JCも存在しなくて、下半期は天皇賞・秋と有馬記念だけ。中でも各世代の強豪が集う有馬の盛り上がりは別格だった。

 国枝:紅白歌合戦みたいだったもんね。

 渡辺:印象深いのはスピードシンボリの連覇(1969、70年)とか、TTGの激突(77年)かな。あとはタニノチカラが勝った74年も。ハイセイコーの引退レースで、場内はすごい熱気だった。

 国枝:ハイセイコーはすごい人気だった。確か競馬場のフェンスが壊れちゃったんだよな。

 稲富:え?

 柏木:73年弥生賞ですね。競馬場に人が殺到して、金網から人があふれちゃったんだよ(笑い)。僕も渡辺さんと同世代だから有馬記念というのは特別だ。でも近年は使い分けがあったりして、さびしい年もあったけど。今年は違いますね。何といってもアーモンドアイが出ますから(笑い)。

 国枝:まあ、結果的にそういう形になっちゃったんだけどね。

 渡辺:いやいや、柏木君の言う通り。アーモンドアイが出るのと出ないのでは、盛り上がりが雲泥の差なんだから。ファンはもちろん、我々も本当にうれしいよ。

 柏木:ええ。有馬記念って、GIとしては珍しく“マイナス要素を考える”レースでもあると思うんですよ。例えば、引退する馬の場合は「能力の衰えがあるんじゃないか」とか。

 稲富:今回のアーモンドアイに対しても?

 柏木:そういう見方をする人がいるはず。距離がどうなのかとか、コースがどうなのかとか。そういう意味でも、楽しみの幅がグッと広がったと思います。堅い馬券が好きな人は3連単の主力に据えればいい。昔は名馬のいるレースは配当が安くなるので馬券が売れなかったんですけど、3連単の時代になってからは堅い馬がいる方が売れるようになりましたから。

 国枝:なるほどね。ならば責任重大(笑い)。

 稲富:みんなが力を出し切るような、クリーンな競馬が見たいですね。

 国枝:そうそう、その通り! 後味が悪いレースは嫌だから。それには出走馬のレベルがある程度の高さで保たれている必要がある。最近はたまにあるでしょ? GIや重賞なのにふさわしくない馬が出てくることが。それって、つまりレースという“商品”を売るべきJRAが…。

 稲富:そ、その話はまた後日にしてください。紙面のスペースもあるので(苦笑い)。

 国枝:そうだな。そういう話をもっと詳しく読みたい方は、ぜひ拙書「覚悟の競馬論」をお読みください(笑い)。

 渡辺:さあ、宣伝も終わったところで、そろそろお開きにしようか(笑い)。今日は皆さん、東スポのためにわざわざ集まっていただいてありがとうございました。それぞれにとっていい有馬記念になるように! そしてちょっと早いけどメリークリスマス!!

 国枝、柏木、稲富:メリークリスマス!!

☆いなとみ・なほ=1990年12月16日生まれ。関西在住のタレントとして幅広く活躍し、現在はABC「おはよう朝日です」、サンテレビ「アサスマ探検隊」、ひらかたパークのCMなどに出演中。彼女が取材した馬が激走することが多いことから、一部のトレセン関係者から「競馬界の女神」と呼ばれている。

☆くにえだ・さかえ=1955年生まれ、岐阜県出身。78年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手として働き始める。90年から調教師として開業し、これまでジャパンCや有馬記念などJRA・GI・16勝(重賞50勝)を挙げている。

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