【有馬記念】リスグラシュー矢作調教師にアーモンドアイ逆転のシナリオはあるのか?

2019年12月18日 21時36分

北口厩務員の手入れに穏やかな表情を見せるリスグラシュー。人馬の信頼関係が伝わってくる

【有馬記念(22日=日曜、中山芝内2500メートル)“番記者”のロングインタビュー】ファン投票1位&GI・6勝のアーモンドアイを負かすとすれば…。ファン投票2位&GI・3勝と現役最強馬に次ぐ、ファンの支持と実績を誇るリスグラシューが最右翼なのは間違いあるまい。第64回有馬記念に「遅咲きのたたき上げ娘」を送り込む矢作芳人調教師(58)に、逆転のシナリオは出来上がっているのか?“番記者”石川吉行がロングインタビューを敢行した。

 ――コックスプレートでGI・3勝目を挙げたリスグラシューの凱旋レースがこの有馬記念。先生にとっての有馬とは

 矢作:ファンの方たちに選ばれた馬たちが走るレース。やはり特別な思いがあるよ。トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスの走った有馬記念(1977年)を、高校生の時に友人たちと見に行ったんだ。朝から並んでゴール前のラチ沿いの場所を確保したまでは良かったんだけど、もうそこから動けなくてね(笑い)。関東に住んでいた僕たちが応援していたトウショウボーイが敗れ、勝ったのはテンポイントだったけど、“いいものを見せてもらったな”って素直に感動したことはいまだに覚えている。それでこの仕事に就くことになったんだから、僕が〝道を踏み外す〟きっかけだったのかもしれないね(笑い)。

 ――意外にも矢作厩舎として今回が初めての有馬記念参戦となる

 矢作:適合する馬がなかなかいなかったことが最も大きな理由だけど…。ただ出走するだけでは嫌だった。その点、今回はファン投票2位に選んでもらっての出走。ぜひともいい走りをお見せしたいという気持ちでいるんだ。

 ――ファン投票1位アーモンドアイとの対決が楽しみ

 矢作:日本で一番強い馬が出てきてくれるんだからね。こちらとしても、どんな競馬になるんだろうかと、ワクワクしているところはあるよ。有馬記念がメンバーが弱くて、賞金の高いだけのレースになってはいけないと思うし、日本人としては年末に強い馬たちが集まって一番を決めるレースを見たいはず。そういった意味でも、今年の有馬記念は最高に盛り上がるレースになると思う。ただ、アーモンドアイだけではなく、出走してくるのは全てがすごい馬。全馬をリスペクトしているし、有馬記念とはそういうレースだと思っているんだ。

 ――特例(短期免許での騎乗期間を終えた外国人騎手でも、特例での免許申請が承認されるケースがある。過去の例では2003年に皐月賞、ダービーの2冠を制したネオユニヴァースとコンビを組んでいたM・デムーロが、クラシック3冠のかかる菊花賞の騎乗を認められた)で引き続きレーン騎手が騎乗できることになった

 矢作:宝塚記念、コックスプレートを勝ってくれて、やはりリスグラシューにはレーン騎手が乗ってほしいと、ファンの皆さんも期待されていたと思う。それに応えて申請を受け入れてくれたJRAの判断には感謝していますよ。

 ――レーン騎手の騎乗ぶりを含めて、前走のコックスプレートを振り返っていただくと

 矢作:向こうに着いてからの状態が非常に良かったからね。今年のメンバーなら勝てるだろうとは思っていた。ヒヤヒヤしたのは競馬を見ていた道中だけかな(笑い)。ジョッキーはペースが速いとみて“位置を下げた”と言っていたが、周囲もリスグラシューを意識して、いじめにきてもおかしくない立場だったし、本当にその位置で大丈夫なのか…なんてね。ジョッキーは相当に自信を持っていたんだろう。

 ――リスグラシューは今回がラストランでもある。改めてどんな馬だと思われますか

 矢作:すごい馬だよね。2、3歳のころは輸送も苦手だったし、海外でGIを勝つ馬になるだなんて、とてもイメージできなかった。(4歳時に)エリザベス女王杯を勝った時は、ようやくGIを勝たせることができてホッとした部分もあったんだけど。そこから5歳となってさらに成長し、牡馬相手のGIを連勝してしまうんだから。牝馬でこんな成長曲線を描いた馬はいないんじゃないかな。馬に対して先入観を持ってはいけないことをリスグラシューに教えてもらった気がするよ。

 ――まだまだ成長しているのなら、引退を撤回して来年も現役生活を続けてみては

 矢作:いやいや、そうはいかないだろ(苦笑)。もちろん、サラブレッドを競馬で走らせるのが調教師の仕事だから、今のリスグラシューを見ていると、そんな気持ちにもなるけどね。でも惜しまれながら引退していく美学もあると思うんだ。それがファンの方々に望まれて出走する有馬記念となれば、リスグラシューの最終戦としては最もふさわしいレースなんじゃないかな。とにかく勝つつもりで、全力で臨みますよ。