【思い出のGIレース=2000(平成12)年「朝日杯3歳S(現朝日杯FS)」】“決死の走り”を見せたタガノテイオー

2019年12月10日 21時30分

勝ったメジロベイリー(ゼッケン3)に骨折しながらも並びかけようとしたタガノテイオー(同8)

 勝ったメジロベイリーよりも2着に敗れたタガノテイオーの印象のほうが強く残っているレース。ゴール前で発症した左第1趾骨粉砕骨折により、その短い生涯を閉じた一戦が2000年の「朝日杯3歳S」だ。

 そのすさまじい状況は翌週の競馬週刊誌の掲載された写真でも確認できた。

 メジロベイリーに並びかけようとしたタガノテイオーの左脚ににじんでいる赤いものは同馬の血。その写真を手に「本当にかわいそうなことをした。この状況でも最後まで走り切るなんて普通はできることじゃない。本当に偉い馬だなと思うし、これほどの馬の血を残せなかったことを心から残念に思う」と語った松田博調教師の表情も忘れられない。

「札幌3歳S(現在の札幌2歳S)で2着に負けたとき、渡辺さん(渡辺栄元調教師)から言われたんだ。“松田君のところの馬の前を走ることは今回で最後かもしれないな”って。新馬でも重賞でもこちらが負けたのに、そんなにも評価してくれているのかと思ったな」と後日談。

 古くからの競馬ファンならお気づきと思うが、渡辺栄元調教師が管理し、タガノテイオーに対し2戦2勝の成績を残した馬は翌年のダービー馬ジャングルポケット。ちなみにその札幌3歳Sでジャングルポケット、タガノテイオーに続いた3着はのちのGI・3勝馬テイエムオーシャン。とてつもないハイレベルレースだった。

「札幌3歳Sだけでなく、あの新馬戦もレベルが高かったんだよ。その新馬戦で5着だったのがメジロベイリーだったんだから」

 これも同師から聞いてハッと思った話。スポットライトを浴び続けた面々に対し、4戦目で未勝利を勝ち上がったメジロベイリーの下克上も取り上げるべきサクセスストーリーだったのだが、失ったものが大き過ぎたがゆえに話題として取り上げることができなかった。

「お世話になった会長(オーナーの八木良司氏)にGIを勝たせたかった。それだけが心残り」と言って定年引退した同調教師にとって、最も無念なレースだったかもしれない。

(大阪スポーツ本紙担当・松浪大樹)