【思い出のGIホース】1991&92年マイルCS覇者ダイタクヘリオスは常識の枠を超越した不世出の名馬

2019年11月14日 21時32分

1992年マイルCSで連覇を達成したダイタクヘリオス

 紛れの少ない淀の外回り、競馬の根幹距離とされるマイルで行われるGIレース。ダイワメジャー、デュランダル、タイキシャトルと、連覇を成し遂げた優勝馬には歴史的名マイラーが名を連ねるが、その中でもとりわけ個性が際立っていたのは、1991、92年のマイルCS覇者ダイタクヘリオスだろう。

 頭を上げて口を割り、時には天井を向いたままという独特の走り。1番人気に支持されると負けるが、人気を落とすとそれをあざ笑うかのような激走をみせる。追い切りではいつも直線でバタバタになって、調子の良しあしがつかみづらい予想屋泣かせの馬。世間的にも気性難を抱える暴走タイプとして扱われていたと記憶する。

「とにかく真面目でいつも一生懸命に走ろうとする馬なんだ。確かに乗り難しいけど、気難しいなんてことはないよ。調教のペースではあんなふうになるのも仕方ない。調教できれいに乗れるようになることより、しっかりやれてることの方が競馬では大事になるから」

 追い切りを終えた直後に汗をぬぐいながら、やはりバッタリと止まってしまったいつも通りの動きを振り返って調教助手さんが話してくれた言葉がなければ、その個性を見誤ってしまったかもしれない。

 91年は“良家の才女”ダイイチルビーを、92年は外国産の“天才娘”シンコウラブリイを破っての勝利。いや、ダイタクヘリオスを語るうえで、忘れてはいけないのは92年の天皇賞・秋だろう。適性距離ではないレースにも果敢に挑んで自分の競馬を貫き、結果として波乱を演出してみせた。どんな条件においても、いつも懸命の走りで爪痕は残してみせる。規格外の能力を押さえ込んで御そうとするより、それを解き放つことに迷いのない騎乗を続けた岸騎手。

 トレセンの追い切り風景はビデオに録画され、その日の直線の動き、時計のみであれこれと評論される時代にあって、ヘリオスなら調教採点はやはり辛口のものとなったのであろうか。1、2、3番と内枠の馬が上位を独占する競馬となった昨年のマイルCS。ヘリオスがいれば大外枠からでも果敢に攻めて1着をもぎ取ったのかもしれない…。

 枠順、展開、斤量、馬場状態などの外的要因や、この血統で種牡馬となった時の価値は? このジョッキーが起用された理由は? その後の消耗度は? 陣営、牧場がどこまで勝利へこだわっているかの思惑をつい邪推してしまう昨今の競馬事情。そんな常識という枠組を取っぱらって、ただダイタクヘリオスを信じるかどうかだけで勝負できたという点でも、やはり不世出の名馬と呼ぶべきなのだろう。

(大阪スポーツ栗東取材班・石川吉行)