【思い出のGIレース=1998(平成10)年「エリザベス女王杯」】牝馬に敵なしを証明した“マル父”メジロドーベル

2019年11月05日 21時30分

98年のエリザベス女王杯を制したメジロドーベル(右)

 記者が競馬にのめり込み始めた1990年代半ばごろは、サンデーサイレンス、ブライアンズタイム、トニービンの3強を筆頭とした輸入種牡馬の最盛期。外国産馬(マル外)の活躍も目立ち、大レースになると、父内国産馬(いわゆる“マル父”)たちは隅に追いやられてばかりだった。

 オグリキャップ、メジロマックイーン、トウカイテイオー、ビワハヤヒデなど、国内で一時代を築いた名馬の産駒でも、外国の血には勝てない…当時、競馬初心者だった記者も複雑な思いを抱き、自然と“マル父”に肩入れするようになっていった。

 そんな時に彗星のごとく現れた“マル父”のスターがメジロドーベル。メジロライアン産駒のドーベルは1996年の阪神3歳牝馬Sで“マル外”の大物・シーキングザパールを破ってGI初制覇を達成。翌年の桜花賞は快速馬キョウエイマーチに敗れたものの、オークス、秋華賞を制覇。押しも押されぬ世代最強牝馬の座を手中にする。記者はドーベルの走りに心酔。秋華賞以降、強豪牡馬や当時の最強牝馬・エアグルーヴに勝てず、勝ち星から遠ざかっても応援を続けた。

 そのドーベルが秋華賞以来、約1年ぶりのGI制覇を飾ったのが98年のエリザベス女王杯。エアグルーヴに次ぐ2番人気に甘んじたが、レースでは最内の狭いスペースを突いて抜け出して完勝。やや折り合いを欠く姿や、インに切れ込んでエリモエクセルの進路をカットしたこと、鞍上の吉田豊の早すぎるガッツポーズはご愛嬌。牝馬に敵なしを証明するこの勝利は、関係者はもちろん、一ファンである記者にとっても格別なものだった。

 メジロドーベルは翌年のエリザベス女王杯を連覇し、4年連続GI制覇、GI・5勝という大記録を達成してターフを去る。その偉大な馬が、種牡馬としては期待されていなかったメジロライアンから出たことも、また何とも痛快だった。

 今は内国産種牡馬のレベルも上がったことから、優遇の必要性がなくなり、マル父マークは2008年に廃止された。日本の馬産の水準が底上げされたことは非常に喜ばしいことなのだが、記者としては、あれだけ肩入れしていたマル父マークの消滅に一抹の寂しさを感じている。

(大阪スポーツ栗東時計担当・岡崎翔)