【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】秋華賞出走エスポワール 来年の凱旋門賞へ夢広がる競馬を!

2019年10月11日 20時59分

角居厩舎から出走するエスポワール

【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】真緑の深い芝は朝露に濡れていた。エーグル調教場のダートコースのはるかかなた、小指の先ほどにも見えない馬影が揺れている。

 凱旋門賞に挑戦するキセキを管理する角居勝彦調教師をはじめ、5人の陣営が見守る中、キセキの調教は行われた。僕もその一人として眺めていた。

 稀有な経験だ。世界の最高峰と言われる舞台に挑む、チーム角居の面々と並んでいるのだ。この緊迫感に身を置いている感動。自然と身震いした。

 キセキは日本で見る時以上のオーラを発していた。勝つことが困難であることは承知しているが、今のキセキなら不可能なミッションをも完遂してくれると期待に胸がふくらんだ。だが、結果は勝ち馬から大きく離された7着。敗因はいろいろと語られているが、とにもかくにもスタートだろう。

 凱旋門賞挑戦が決まったころ、角居先生は「スタートが甘くなると、向こうの騎手はすぐに前を閉める」と不安を口にしていたが、嫌な予感が的中してしまった。とはいえ、スタートを決めていれば勝てていた、などと言うつもりはない。だけど、少なくとも掲示板の一角を占めていた可能性はある。

 レースを終えて戻ってきたフィエールマンとブラストワンピースは、完全に脚が上がっていた。あのエネイブルでさえ疲労感を漂わせていた中で、キセキはまるで返し馬のようなハツラツとした脚取りで帰ってきた。「エネイブルより前で競馬をしないと勝負にならない」。角居先生は唯一、そこに勝機を見いだしていた。その競馬ができなかったことで、キセキには余力があった。

 来年こそ! 角居厩舎、最後の挑戦を信じたい。角居先生、来年も僕をロンシャンに連れていってください。

 秋華賞には角居厩舎からエスポワールが出走。父は凱旋門賞2着2回のオルフェーヴル。GI馬になれば、来秋のロンシャンへの可能性を秘める馬ではないか。そういう夢の広がる競馬を見せてほしい。

【プロフィル】きょくどう・なんおう 講談師。マイケル・ジャクソンの自伝を読んで講談師の道を決意。演目は競馬、MJの他に「五代友厚」をシリーズ化。毎週日曜7時~ラジオ関西「南鷹の今昔なにわ物語」出演中。夢はグラミー賞朗読部門。