【スプリンターズS・後記】GI初制覇タワーオブロンドン これぞ完成された王者の走り

2019年09月30日 21時33分

Vゴールを決めてタワーオブロンドンの背で勝利をアピールするルメール

 秋のGI開幕戦・第53回スプリンターズS(29日=中山芝外1200メートル)は、2番人気のタワーオブロンドン(牡4・藤沢和)が快勝してGI初制覇。「最初からスプリンターと思っていた」という鞍上ルメールの見立て通り、大一番で見事にその素質を開花させた。とはいえ、サマースプリント王者がこの一戦を制するのは2006年のシリーズ創設以来、初めて。異例ローテで戴冠に導いた陣営の緻密な戦略と、優勝馬の今後の可能性を探る。

 今夏から短距離にシフトチェンジしたタワーオブロンドンにとって、スプリンターズSは約3か月半で4戦目という強行軍。過去のサマーチャンピオンが大一番ではね返されてきた事実を踏まえれば、この勝利は驚異的。たたえるべきはそのタフネスぶりか? いや、管理する藤沢和調教師の話を聞けば、緻密な計算があればこその戴冠と理解させられる。

「札幌は平坦なコースで、調教は芝とダートしか使えない。調教をあまりやれない分、予定通り間隔を詰めて使わせてもらいました」

 今回でJRAのGI・29勝目。そんな名伯楽の言葉を借りれば、函館スプリントS(3着)やキーンランドC(2着)、さらにサマー王者を決めたセントウルSさえもすべて本番を見据えた“追い切り”代わり。調教をセーブして常にオツリを残したがゆえに、連戦の疲れを持ち込まなかったのだと納得するしかない。

「夏からだんだんとパワーアップしましたし、今日は体も絞れて速い脚を使うことができました」

 ルメールもレース後に“GI仕様”の仕上がりを口にしたが、本番までにスプリント3戦を消化した効果はレースラップにもはっきりと表れている。今回記録した上がり3ハロン33秒5は出走馬中3番目の数字。すべて最速上がりだった近3走とは対照的だが、それこそがスプリンターとして完成された証しとなる。

「今日は結構いいスタートで中団を取ることができました。冷静に走っていたのですごくいい脚を使えると思ったし、ラスト200メートルでトップスピードに乗ると最後まで集中しました」(ルメール)

 今回、タワーオブロンドン自身の3ハロン通過は33秒6。後半との差はわずか0秒1で鞍上の言葉通り、レースの流れに乗りながらも決め手を発揮したことは明白だ。そして最大の見どころは「ダノンスマッシュはインサイドであまり好きな位置じゃなかった」と見るや、一気に外からかぶせに動いた。つまり、明暗を分けたこの機動性こそが、完成された“王者の走り”ではなかったか。

「次走は海外も含めて慎重にレースを選びたい。ただ、今夏から良くなってきたので、また頑張ってくれると思いますよ」と結んだ名伯楽。前途洋々たる4歳馬の初戴冠。スプリンターとしての栄光の道はまだ始まったばかりだ。