【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】ローズSのビーチサンバ 母フサイチエアデールより優等生に見えても品性の高さはやはり母譲り

2019年09月13日 20時58分

品性の高さは母譲りのビーチサンバ

【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】春の女王たちが不在で風雲急を告げる秋華賞戦線。オークス2着のカレンブーケドールも紫苑Sで敗れ、より混迷の度合いが深まってきた。となれば、桜花賞2着のシゲルピンクダイヤにいよいよ出番が回ってきそうだ。渡辺薫彦厩舎で鞍上が和田竜二となれば応援しないわけにはいかない。

 だが、他の出走馬に目を移すと、どうしても肩入れしたくなる血統がいた。

 ビーチサンバ。

 母フサイチエアデールは“高嶺の花”という表現にふさわしい、品性にあふれた馬だった。松田国英厩舎の馬で、本当に大切に育てられていた。競走馬としては桜花賞2着、エリザベス女王杯も2着2回とGIを勝てずに終わったが、重賞は牡馬相手のシンザン記念、ダービー卿CTを含めて4勝。こう記せば順風満帆の現役生活だったように思うが、若馬のころは、とんだオテンバだった。

 デビュー前から調教の動き、時計ともに目立っていた。鞍上にも武豊を配して、負けることを想像するのが難しいほどの存在。ところが、追い切った後にサンデーサイレンス産駒特有の気の激しさを出し始める。これには松田も担当の稲田稔も頭を悩ませたが、レース当日は一転しておとなしすぎる。パドックの周回ではポックリポックリと歩き、何度も「ヒヒーン」といななく。これには松田も驚いた。単勝1・8倍の1番人気だけに、ファンの間にも心配の輪が広がっていった。

 そして、ゲートが開くとエアデールは馬群から取り残された。勝ち馬から5秒遅れのシンガリ負け。武豊は「ゲートでも鳴いていた」と松田に伝えた。

「牡馬は牝馬がいるとよく鳴くんだけど、牝馬があそこまで鳴くのは珍しいね。鳴くというより、泣いている感じだったよね」

 松田は鳴き声でエアデールの心境に迫ろうとした。それから試行錯誤を繰り返して、ようやく4戦目にして初勝利をつかむ。そこからは一気に桜花賞の有力馬にまで上り詰めた。

 ビーチサンバには母のような牡馬をもナデ斬る狂気は感じない。母よりは優等生に見えるが、品性の高さはやはり母譲りである。エアデールはGIだけでなく、このローズSでも2着。母を超えるためには、是が非でも取っておきたいタイトルだろう。

【プロフィル】きょくどう・なんおう 講談師。マイケル・ジャクソンの自伝を読んで講談師の道を決意。演目は競馬、MJの他に「五代友厚」をシリーズ化。毎週日曜7時~ラジオ関西「南鷹の今昔なにわ物語」出演中。夢はグラミー賞朗読部門。