【取材秘話】札幌2歳S快勝ブラックホール レース3日前の衝撃

2019年09月05日 21時32分

札幌2歳Sを快勝したブラックホール

【札幌2開催の総括】ハードワークの札幌出張を乗り切り、ようやく本拠地・美浦へと帰還。気づけば馬もすっかり入れ替わり、気分はまるで浦島太郎である。確かに短いようで意外に長かった北の大地の6週間。その札幌2開催の総括を今週は記したい。

 開催当初に驚いたのはダートコースの高速化だった。3歳未勝利で記録された5ハロン58秒7、8・5ハロン1分44秒7(ともに良)は、他場なら2勝クラスの数字。スピード競馬の楽しみはあるが、留意すべきは札幌ダートはレースのみならず、滞在馬にとって調教のメインコースになっている点だ。

 エルムS時に「札幌は(クッションの利かない)ダート調教を余儀なくされる。脚元にはきませんでしたが、胸前の筋肉で衝撃を緩和する分、そこに疲れが出るんです」というリアンヴェリテ=山本達也助手の談話を掲載した。古馬さえ耐え切れないのだから、成長途上たる2歳馬の負担は推して知るべし。JRAが充実した開催を本気で望むならば、札幌の調教施設の改革にすぐさま着手するのが筋だろう。

 一方、記者にとっての収穫は今年も才能豊かな逸材の走りをナマで見られたこと。中でも衝撃を受けたのは札幌2歳Sを制したブラックホールだった。担当の三尾一之助手が「レース3日前に競馬をしちゃったな」と調教後につぶやいた通り、芝6ハロン72・8秒の追い切り時計は並の2歳ならご法度たるスパルタ調教だった。

 ゆえに本命を変更するか大いに迷ったが、初志貫徹の決め手は追い切り当日午後も翌朝も出された3升半のカイバをペロリと平らげた同馬のタフネスぶりだった。「とにかくスタミナは半端ない」と1週前から言い続けてきた三尾助手の言葉に偽りなしを確認した時点で、◎は決まったと言えようか。

 レース後は愛弟子・石川裕紀人に対して「追い切り時計は速すぎるし、競馬ではスタートが良かったのに下げて外を回すんだから…。本当に下手だ」と苦言を呈した師匠の相沢郁調教師。それでも1馬身1/4差の完勝に「馬は強いね。ゴールドシップ産駒でも、雰囲気は(祖父の)ステイゴールドだね」の言葉は、人馬揃って成長を願う気持ちの表れだったに違いない。

 他にも2勝クラスを完勝した3歳馬ヒシゲッコウ、休養を挟んで4連勝を飾ったポンデザールなど、秋の楽しみな素材が目白押しだった今年の札幌。これら素質馬との出会いが、何よりの土産物だったと今は確信している。