【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】小倉2歳Sのカイルアコナ「胸前のボリュームがあるスプリンター」

2019年08月30日 20時58分

カイルアコナ

【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】今ごろ?と思われるだろうが、小倉2歳Sの馬柱を見て気づいたことがある。小倉芝1000メートルの勝ち馬がいない。調べてみると、ちょうど10年前のカレンナホホエミが勝った新馬戦を最後に施行されていないと知る。横並びとなった1200メートル勝ち上がりの馬柱を見ていると、ひっそりと姿を消した芝1000メートルの新馬が懐かしい。

 中でも印象に残っているのはタケイチケントウ。芝1000メートルの新馬をレコードで勝ち、小倉3歳S(当時)に進んだ。

「僕が下手に乗らなければ勝てるんちゃいますか」

 いつものようにニコニコと笑いながら、常石勝義は自信を隠さなかった。

「それくらいホンマにええスピードしてるんですよ」

 今思えば、まだデビュー2年目の若手騎手の言葉だ。これほど危ういものもない。しかし、当時は知っている関係者も少なく、親しくしてもらっていた常石の直言はそのまま信じていた。結果は辛勝だったが、常石勝義の初重賞勝ちとなった。

 次の京成杯3歳S(当時)にはすでに大物風を吹かせていたグラスワンダーがいた。

「小倉3歳Sは僕がうまく乗れなかったのに、馬に勝たせてもらいました。それくらい強い馬です。相手が強くてもタケイチケントウも強くて速いです」

 後に怪物とも名馬とも称されるグラスワンダーを相手にこの強気。買ったよ、馬券。今みたいな豆券買いじゃない。家の電気、水道が止められようが、まずは馬券に費やしていた。3番人気とはいえども、単勝13・7倍もついたからね。

 だけど完敗だった。赤子の手をひねるかのように、遊びながらグラスワンダーはタケイチケントウのはるか彼方を走っていた。強くて速かったタケイチはその後、先頭でゴールを駆け抜けることはなかった。グラスワンダーの姿が遠のくのを見て、走ることがバカバカしくなったのかもしれない。

 最近は出世レースともなりつつある小倉2歳Sだが、タケイチケントウのような早熟のスプリンターの姿も懐かしい。カイルアコナは父キンシャサノキセキ。体形も体高が低く、胸前のボリュームがあるスプリンター。将来性もありそうだが、小倉2歳Sにピタリと当てはまるキャラだ。

【プロフィル】きょくどう・なんおう 講談師。マイケル・ジャクソンの自伝を読んで講談師の道を決意。演目は競馬、MJの他に「五代友厚」をシリーズ化。毎週日曜7時~ラジオ関西「南鷹の今昔なにわ物語」出演中。夢はグラミー賞朗読部門。