【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】関屋記念に出走ミエノサクシード

2019年08月09日 20時58分

ミエノサクシードの気高さは調教師似?

【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】「顔を腫らせて傷だらけになりながら『乗ります。乗せてください』と亮は言ってきたんだが…」

 2000年11月19日。マイルCSで1番人気に推されていたダイタクリーヴァ。その手綱はまだ5年目の高橋亮に託されるはずだった。しかし、2つ前のレースで落馬。リーヴァを管理する橋口弘次郎は苦渋の決断を迫られる。橋口にとって馬だけではなく、高橋亮も愛弟子である。ようやく師弟でつかみ取ったGI制覇の大チャンス。乗せてやりたいのは山々だ。しかし、橋口は心を鬼にした。

「GIの1番人気だしね。あの状態で乗せるわけにはいかなかった」

 安藤勝己へ乗り替わり、結果は2着惜敗。“勝負に徹した非情采配”だと、高橋亮を応援するファン、もしかしたら高橋本人もそう思ったことだろう。

 もちろん目の前で頭を下げる傷だらけの亮を見て、橋口だって揺れていた。しかし、その姿を見たとき、「足がすくんだよ。痛々しかった。見ている俺が痛いくらいだった。正直、体のことが心配で乗せるわけにはいかなかった。リーヴァへの責任もあるけど、もし亮に異変があれば取り返しのつかないことになる。負けた責任は取れるが、亮の将来の責任は取れないからね」。

 橋口はあの瞬間、鬼になったのではなく、親心がうずいたのだった。

 あのころは、僕も「亮くん」と気安く呼んでいたけど、今は調教師然とした“たたずまい”。さすがに亮くんとは呼べないが、今も昔もクールで誠意ある対応に変わりはない。

 関屋記念に出走するミエノサクシードもなかなかクールな女で、人に体を触れられるのを嫌がる。そんな気高さは調教師似かもしれない。

【プロフィル】きょくどう・なんおう 講談師。マイケル・ジャクソンの自伝を読んで講談師の道を決意。演目は競馬、MJの他に「五代友厚」をシリーズ化。毎週日曜7時~ラジオ関西「南鷹の今昔なにわ物語」出演中。夢はグラミー賞朗読部門。