ディープインパクト亡き日本競馬界の今後

2019年08月01日 21時34分

主がいなくなったディープインパクトの馬房は静けさに包まれていた(30日、社台スタリオンステーションで)

 日本競馬史に残る名馬ディープインパクトがこの世を去った。けい養先の社台スタリオンステーションによると、28日に以前から治療を続けていた頸部の手術を実施、無事に成功し術後の経過も安定していたが、29日に突然起立不能となった。そのために30日朝にレントゲン検査を行ったところ、頸椎骨折が判明。回復の見込みが立たないことから、無念の安楽死の処置となった。同馬は今年2月から二十数頭の交配を行ったが、3月に出た首の痛みによって残りのシーズンの種付けを休止していた。

“ディープインパクト死す――”。この突然の訃報に対し、トレセン関係者から驚きの声が出た。同馬を管理した池江泰郎元調教師は「突然のことに大変驚いています。約2年の現役生活では最高の成績を挙げてくれました。調教師として夢のまた夢のようなレースを勝たせてもらい、宝物のような馬でした。引退式ではみんなに見送られて、あの光景はいつまでも記憶に残っています。牧場の方にも大事にしていただき、種牡馬としても活躍してくれました。今は心よりご冥福をお祈りするのみです」とコメント。

 2006年に現役を引退した後も種馬として絶大な影響力を見せたディープ。ディープブリランテ、キズナ、マカヒキ、ワグネリアンなどのダービー馬を輩出し、牝馬でもジェンティルドンナ、ヴィルシーナなど数多くのGI馬を世に送り出した。今年のダービーを産駒のロジャーバローズで勝利した角居勝彦調教師は種馬としての偉大さをこう評する。

「純粋な日本馬として世界に求められた種馬でしたから私にとってもちろんですが、世界の競馬にとってショッキングな出来事ですね。世界の馬産地が欲しがった馬でしたし、そういう話をよく聞きました。今の若い調教師たちにとっては、ディープの産駒を預かる、つくるというのが目標になる馬でしたから、そういう種馬がいなくなる喪失感は大きいですね」。ディープなき後の日本競馬界について同師は「ディープなき後は…。ディープに合う母馬が多いですから、まずはどのディープの子供がそれらと合うのか、悩ましいです。競馬ビジネスの景色も変わるでしょうね」と今後の影響を口にする。

 本紙評論家で元JRA調教師の中村均氏は「サンデーサイレンスが死んだ時に“日本の競馬は終わってしまうのではないか”という関係者の見方が多くあった。しかし、そこにディープが現れて日本の競馬を救ってくれた。サラブレッドは血で走ると言うけど、血統というものは恐ろしいもので今後、ディープの素晴らしい血を受け継ぐ優秀な馬がきっと出てくると思う。そういう馬が再びサンデーなき競馬を盛り上げたディープみたいに日本の競馬を盛り上げてくれるでしょう」と指摘。サンデー→ディープとつながれてきたその血は、今年の2歳を含め残り4世代となったディープ2世に引き継がれることになる。