【日本ダービー・後記】激走Vロジャーバローズとサートゥルナーリアの明暗を分けたもの

2019年05月27日 21時34分

ロジャーバローズの背でガッツポーズの浜中。驚異的な先行力で栄光を勝ち取った

 令和元年のダービー馬は12番人気のロジャーバローズ――。26日、東京競馬場で行われた競馬の祭典・第86回日本ダービー(芝2400メートル)は1枠1番の絶好枠からレースを進めた超伏兵ロジャーバローズ(牡・角居)が激走。記念すべき一戦の覇者となる一方で、圧倒的な人気を背負った皐月賞馬サートゥルナーリアは4着に敗れた。同じ角居勝彦厩舎所属の2頭の明暗を分けたものは何だったのだろうか?

 2頭以上の多頭数出しは常に敗者をつくり出す。だが、そのほとんどは上位人気馬が先着。いわゆる下位人気の馬が下克上を果たすことはめったにない。それが無敗で皐月賞を制し、圧倒的な1番人気に支持されていたサートゥルナーリアと、前走の京都新聞杯で2着に敗れただけでなく、初東上を果たした前々走のスプリングS(7着)では輸送でイレ込み、競馬の前に終わってしまった前科まであるロジャーバローズ。12番人気の低評価は決して低過ぎるものではなかったはず。逆転が起こり得るはずもなかったのだ。

 だが、競馬はわからない。いや、わからないのではなく、難しいという表現のほうが妥当か。本来、勝者と敗者を分けるものは絶対能力。しかし、速い流れ、止まらない馬場、前に行ける脚質的な強みなど、様々な要因がかみ合ったロジャーバローズに対し、スタートで出遅れ、人気を背負っている身だからこそ、外から追い上げていく形を取らなければならなかったサートゥルナーリア。2頭のコントラストは手綱を取った2人のコメントにも表れている。

「なかなか思うような展開にはならないものですが、今回に限ってはいい形になってくれた。バテずに長く脚を使う馬なので後続を待たずに動くつもりだった」(ロジャーバローズ=浜中)

「スタートが近づくにつれて気持ちが高まり、ゲートオープンのタイミングも良くなかった。ポジションが後方になり、早めに動かなければならない展開で馬に負荷をかける形になってしまった」(サートゥルナーリア=レーン)

 管理する角居調教師の心境も複雑だろう。ダービー制覇に喜びを爆発させたい一方で、圧倒的な1番人気で負けてしまったという責任。「引退まで時間のない中で申し訳ない気持ち」とダービーの勝利会見とは思えない言葉も出たほどだ。

 しかし、この結果の逆が正しい結末だったのかといえば、それも違う。ロジャーバローズは自身のストロングポイントを存分に証明し、サートゥルナーリアは負けたことで今後の強化ポイントを見つけた。振り返れば、凱旋門賞に登録していたのはサートゥルナーリアだけではない。ロジャーバローズの名も凱旋門賞登録馬の中にあったことを忘れてはいけない。

 5ハロン通過は57秒8。2番手追走だったとはいえ、レースレコード決着だった先週のオークス(同59秒1)より1秒以上も速いペースを押し切ったロジャーバローズのスピード持続力はサートゥルナーリアだけでなく、他の皐月賞上位組さえもしのぐものだった。マークされた2分22秒6はダービーレコード。もちろん、先週のオークス(2分22秒8)よりも速い。令和元年のダービー馬として胸を張れる内容、数字を残している。

 レース後、ロジャーバローズのオーナーサイドは凱旋門賞出走を前向きに話し、サートゥルナーリアは挑戦プランを撤回した。それは2頭の立場が入れ替わったことを意味している。

【凱旋門賞への準備万全】角居調教師といえば、ホースセラピーへの取り組み(サンクスホースプロジェクト)に積極的なことで知られているが、その一方で自身が何度も渡仏し、時には1か月単位で滞在。海外で働く人材を支援するとともに、自厩舎のスタッフも年に1回程度の間隔で研修させていたことに関しては、あまり報道されてこなかった。

 日本馬の凱旋門賞挑戦は、その悲願が達成されない限りは続くだろう。しかし、これまでは凱旋門賞制覇を狙える名馬が登場→遠征が本格化するパターンがほとんどだった。だが、角居厩舎の場合は違う。いずれ来る機会を逃さぬため、競走馬以外の土台を作り続けてきた。2010年のヴィクトワールピサ(凱旋門賞=7着)がそのきっかけになったことは想像に難くない。凱旋門賞の扉を開ける日が来るのなら、その準備を続けてきた同厩舎こそがふさわしいはずだ。

 現段階で遠征の可能性があるのはロジャーバローズと宝塚記念を控える菊花賞馬のキセキ。2頭での仏遠征はあるのだろうか? その動向に注目したい。