【日本ダービー】ダービー・トゥ・ダービーを体現できる馬――それがサートゥルナーリア

2019年05月24日 21時01分

“アニキ”とともに厩舎を出発し、運動に向かうサートゥルナーリア。まさに貫禄の歩みだ

【日本ダービー(日曜=26日、東京芝2400メートル)栗東発トレセン秘話】大切なダービーウイークに張り切って話題にすることではないのかもしれないが、それにしても早くなった。何がって、ダービー出走馬のデビュー時期だ。

「育成技術の進化。それに尽きるよね。調整がスムーズに進めば、クラシック級の馬でも早期デビューさせる。いや、早期デビューした馬こそが、クラシックに乗ってくるといったほうがいいかもしれないな。秋にデビューする馬は、昔の年明けデビューに近い感覚になってきた」とはダービーにクラージュゲリエ、サトノルークスを送り込む池江調教師。2頭とも秋の京都開催を待たずにデビューした馬たちだ。

「能力的にダービーに出れてもいい馬は他にもいたんだ。でも、間に合わなかった」(池江師)

 能力だけでなく、そこに至るまでの過程が重要になってきたのであれば、時間的猶予がもたらしたものは何か? この部分を追求してみたい。

 例えば、クラージュゲリエはデビュー2戦目の札幌2歳S(3着)で気性面の難しさを見せた馬。しかし、修正する時間がたっぷりとあったことで、その後にいくつかのチャレンジをすることができた。「長距離輸送」と「折り合い」の2つのミッションをクリアした共同通信杯は、3着でもダービーにつながる競馬になったはずだ。

 札幌デビューから、8戦目にして青葉賞を勝ったリオンリオンも近いものがある。

「素晴らしい馬体をしている馬ですからね。クラシックに乗せたいとデビュー時から考えていたけど、思うような結果が出なかった。3走前の中山(水仙賞=3着)で(横山)ノリに乗ってもらったときに“これまでのような競馬が合うタイプじゃないな”って。それでハナを切る、現在のスタイルになったんですよ」と松永幹調教師。

 積み重ねたキャリアの果てに、馬のキャラクターを見つけたパターンだ。開眼させてくれた相棒はいなくなってしまったが、試行錯誤させた時間と戦績を見れば、新パートナー(横山武)が作戦に迷うことはないだろう。これも早期デビューの強みと言えなくもない。

 道営からの転入馬ナイママを除けば、サートゥルナーリアは今回の出走馬で最初にデビューを果たした馬だ。気性の難しさを指摘された兄たちと違い、成熟した精神面を誰もが強調した昨年6月から1年――。時の流れの早さに驚いてしまうが、それ以上に驚きなのは、ダービーに至るまでのほとんどをプラン通りに進めてきたこと(知っている限りでは、札幌2歳S出走予定が変更になったくらい)。

 サートゥルナーリアに関していえば、早期デビューの恩恵うんぬんはまるで関係なかった。あえて「想定外」を探すなら、デビューから担当していた吉岡助手が試験に合格し、吉岡調教師となったことで、担当者が代わったくらいだろうか。

「GIを意識できる馬はそれなりにいますけど、このレベルまで能力が抜け切っている馬はめったに出てきませんからね。正直、この馬でダメだったら、アニキ(新担当者になった滝川助手の愛称)は永遠にダービーを勝てないんじゃないか。そう思ってます」と辻野助手が冗談交じりに口にしてから数か月――。

 思っていたより辛勝(?)だったとはいえ、予定通りに皐月賞を制覇し、単勝1倍台でダービーのパドックに担当馬を連れてくることになった話題の主は、2010年の日本ダービーで1番人気3着に敗れたヴィクトワールピサの担当者だった。絶対に勝てると信じて疑わなかった、あのダービーから9年――。

「忘れ物を取りに行かないとアカンからね」

 そんな滝川助手の決意の言葉を記者が耳にしたのは皐月賞前日の朝のことだった。目標は最初からダービーのみ。ダービー・トゥ・ダービーを体現する馬=サートゥルナーリアの勝利を見届けるため、今週も東京競馬場に行ってみようと思っている。