【日本ダービー】タガノディアマンテ「田辺君が乗るなら一発ある」

2019年05月21日 21時30分

中村均元調教師(右)は鮫島厩舎の番頭・野田助手を取材

【日本ダービー(日曜=26日、東京芝2400メートル)中村均元調教師「令和のボールドエンペラーを探せ!」:集中連載1】平成時代の東京スポーツグループの競馬のセンターを張ったのは清水成駿の「馬單三國志」。その清水予想の真骨頂とも言うべきものが、14番人気のボールドエンペラーに敢然と◎を打ち込んだ1998年の第65回日本ダービーだった。時は平成から令和に移り、今年、本紙予想陣に新たに評論家として加わったのが、そのボールドエンペラーを管理していた中村均元調教師というのは因縁めいたものを感じざるを得ない。となれば、本年のダービーでやることはひとつ。「令和のボールドエンペラーを探せ!」。智将・中村均の出陣なり――。

「実は3強の争いかな、と見ていたんだけどな」

 事前の打ち合わせでいきなり、取材班の気勢をそぐようなことを漏らした中村均元調教師。

「皐月賞が上位3頭とそれ以外では少し差があるかな、という競馬だったんでね。ただ、競馬はやってみないと分からない。戦国時代にだって、まさかという大逆転劇が何回か起こっている。それを期待して穴馬を探してみようか」

 まず向かった先は栗東トレセン…ではなく、同施設を一望できる金勝山の山中にひっそりとある馬頭観音堂だ。

「ビートブラックが天皇賞・春を勝った時(2012年=14番人気)、レース前にここに必勝祈願に来たんだ。御利益がある馬頭さんでね。まずはここで祈願したほうがいいだろう」

 ビートブラック並みの超伏兵が見つかることを祈った後は、いよいよ栗東トレセンに突撃だ。

「皐月賞のビデオを何度も見て、ボールドエンペラーと同じような末脚を使っている馬を見つけたんだ。まずはその馬が気になるな」

 今年2月まで現役の調教師で、かつては日本調教師会会長という要職に就いていたこともあり、トレセンに来れば多くの関係者から声がかかる。

「先生、お久しぶりです。なにをやらされてるんですか?」

 照れながらも智将・中村均が、最初に足を運んだのは鮫島一歩厩舎。ボールドエンペラーに似ていると指名したのは皐月賞(6着)で上がり34秒4の末脚を使ったタガノディアマンテだ。

「前走(京都新聞杯=5着)は、ちょっと松山君が行き過ぎた感じを受けたんだけど」

 智将の質問に答えてくれたのは番頭の野田助手。

「松山騎手も出して行ってはいないんですけど、それまで田辺騎手が控える競馬をしていたので。少し馬が戸惑ったのかな、というのはあると思います」

 今回、智将は誰が乗るのかが気になっていたそうだ。「田辺君が乗るなら一発がある。彼なら面白い競馬をしてくれるんじゃないかと思うんだ」と。

「実は京都新聞杯も田辺騎手に頼もうとしていたんです。いろいろ手違いがあって乗れませんでしたが、今回は乗ってくれますので」(同助手)

 タガノディアマンテの2歳姉タガノヴェローナは今年2月まで中村均厩舎に所属していた。智将のよく知っている血統でもある。

「タガノの八木(良司)さんというのは素晴らしいオーナー。調教師にすべてを任せてくれる方で、たとえ馬が故障したとしても文句を言わないし、負けた後は“次に頑張ろう”と、我々を慰めてくれる。GIを勝ちたいとよくおっしゃられていたし、鮫島君もその気持ちは持っていると思う」

 ただ、ひとつ拭えない気掛かりがあるという智将。皐月賞(6着)の後に1戦(京都新聞杯=5着)挟んでいることだ。

「やっぱりベストは皐月賞後、ダービー一本に絞って調整することだからね。ボールドエンペラーもそうだった。ダービー一本に仕上げて、それが実った。ダービー前日の東京競馬場で引き運動をしている時の姿がすごくきれいでね。生涯一のデキになっていたんだ。あれを見て、これならいいレースになるかも、と思った」

 タガノディアマンテがダービーで大駆けを決めるには、皐月賞の後に使った京都新聞杯からの回復度。ここに尽きる。馬房での様子をじっくりチェックした智将の感想は「少しすっきりし過ぎている感じを受けた」。

 本番までにどこまで状態を上げていけるかにかかっている。

 取材後は、嵐の大野智の名字がついているということで、全国の嵐ファンがお参りに訪れることで有名な、トレセン近郊の大野神社でも念入りに“必勝祈願”を行った中村均元調教師。この分なら令和のボールドエンペラーもすぐに発見できるかもしれない。

「タガノディアマンテほどではないけど、それに次ぐぐらいの脚を使った馬が皐月賞にいた。次に行くのはそこだな」

 果たして、その馬とは?(続く)

【1998年の日本ダービー】3強といわれたスペシャルウィーク、キングヘイロー、セイウンスカイが1~3番人気を分け合ったが、レースはスペシャルウィークの独壇場。初のダービー騎乗だった福永祐一のキングヘイローは折り合いを欠き、まさかの逃げから自滅して14着大敗。2番手から一旦先頭に躍り出たセイウンスカイも直線半ばで力尽き4着に沈んだ。そんな中、他馬とはレベルの違う末脚で5馬身差の独走Vを決めたのがスペシャルウィークだったが…。その後ろでひそかに脚を伸ばしていたのが14番人気の超伏兵ボールドエンペラー。先行して粘る3着ダイワスペリアー、セイウンスカイをゴール手前でかわして2着確保。ダービーに照準を定め、メイチの仕上げを施した智将・中村均、乾坤一擲の大勝負が一矢報いた瞬間だった。