【思い出のGIレース=平成23年「ヴィクトリアマイル」】

2019年05月07日 21時31分

ブエナビスタ(手前=ゼッケン13番)をクビ差抑えて見事な勝利を飾ったアパパネ(中)

 プロ野球に交流戦もまだ誕生していない時代、日本シリーズが異様に盛り上がった理由はただひとつ。セとパの王者が互いのプライドを賭けて手探りのまま激突する図式にあった。スポーツ観戦の醍醐味を突き詰めれば「果たしてどちらが強いのか」。その意味でファンの注目を最大級に集めた平成23(2011)年こそ、ヴィクトリアマイルのベストレースと言えようか。

 断然の主役として君臨したのは、前年の年度代表馬ブエナビスタ。牡馬相手の天皇賞を含めて、5つのGIタイトルをすでに奪取していたエースだ。しかしながら、これに堂々と喧嘩を売った馬がいた。前年の3冠牝馬アパパネである。

「具合はいいし、東京マイルはおそらくベストの舞台。強さは重々承知しているし胸を借りる立場でもあるけど…。王者とどこまでわたり合うか、俺も楽しみでならないよ」

 当時、満面の笑みで語った国枝調教師の表情は実に印象的だった。指揮官というよりまるで競馬の一ファン。当事者さえワクワクさせる「女王決戦」が幕を開けたのだ。

 小細工なしのガチンコ勝負だったのもスタンドを大いに沸かせた要因だろう。レースは前半4ハロン44秒6のハイペース。3角でアパパネは9番手、ブエナビスタは13番手。互いに己のスタイルを守りつつ、直線の攻防へ展開した。先に仕掛けたのはアパパネの蛯名正義だ。これをガッチリマークするかのように、ブエナビスタの岩田康誠も外から追撃を開始する。先行したレディアルバローザ(3着)もしぶとい粘りを見せたが、最後まで蛯名の意識にあったのは1馬身半後方から脚を伸ばすブエナだったろう。その結果は。単オッズ1・5倍の主役をクビ差抑えて見事な戴冠。見ごたえ十分の激突に、ゴールの瞬間は大歓声がスタンドにこだました。

「来るなら来いとドンと動いた。あれこそまさにマサヨシの渾身騎乗だったな」と今なお思い出深く振り返る国枝調教師。それほどまでに競馬の醍醐味を堪能させる平成の頂上対決であった。

(美浦担当・山村隆司)