【思い出の重賞レース=平成6年「京都新聞杯」(GII)】

2019年04月29日 21時30分

勝ったスターマン(左=ゼッケン9番)とナリタブライアン(手前=同6番)

 ♪朝焼け~の 光のなかに立つ影は~ ミラーマン!

 時代は平成から令和へと移ろうというのに、思い出されるのは昭和のヒーローです。古すぎるっ! そしてめっちゃマイナー! 鏡など光を反射するものがないと、主人公は変身できないという野暮ったい設定。でもウルトラマンなどの王道をゆくヒーローより、そのうさんくささになんだか魅かれてしまうようなガキでした。

 単にミラーマンと語感が似ているというだけでなく、平成を振り返って印象に残っている名馬がスターマン。GIを勝っているわけでもないのに、いまだ多くの競馬ファンの間で語り継がれる個性派です。

 その名を世に知らしめたレースが、平成6(1994)年の「京都新聞杯」。菊花賞の前哨戦として行われていた当時、3冠にリーチがかかっていたナリタブライアンの単勝支持率は1・0倍の元返し。そんなスーパーホースをかわしてスターマンがゴールへと飛び込んだ瞬間、どれだけ絶叫したことか。

「めちゃくちゃ、馬が良くなってる。今ならブライアンに勝てるかも」

 陣営からそんな話を聞いたのは、スターマンが3連勝で神戸新聞杯を勝ったころ。しかし、ジョッキーを乗せた京都新聞杯の直前追いで、ガツンとひっかかっていわゆる逆時計をマーク。やっぱりダメだという空気が世論を覆うなか、「大丈夫、伸二が午後に厩舎までわざわざ謝りにきた。『競馬では絶対に失敗しません』って言ってたから心配はない」。

 練習で失敗したからこそ、気づけることがある。ささいなミスなんて本番で取り返せばいい。伸びゆく若手であった藤田伸二の男気を信じての本命。失礼とならないよう、ナリタブライアン対抗の1点予想での馬券勝負でした。

 菊花賞ではナリタブライアンの5着に敗れ、その後は屈腱炎に悩まされGIタイトルには手が届かず引退したスターマン。現役から退いた藤田伸二騎手も、中央競馬界にとっては過去の人となりました。今、振り返れば、当たりはしたものの、この時の予想はおそらく間違いだったんでしょう。でものちに怖いもの知らずとされたジョッキーは、繊細な騎乗で完璧に折り合い、王道を突き進むチャンピオンに見事斬り込んでみせた。その姿を見られたのがこの1レースのみだったというなら、なおのこと外れても悔いなしの勝負でした。

 しかしあの時、儲かった銭はいったいどこへ消えたんでしょうか? その日、夜の街で“スターマン”になろうとして散財したまでの記憶は…。残飯をあさるカラスが飛び交う街で、朝焼けの光の中にあぜんと立ち尽くし、プチ平成バブルのはじける瞬間を実感したことも懐かしい思い出です。

(大阪スポーツ栗東担当・石川吉行)