アーモンドアイ 凱旋門賞断念は競馬史において大きな損失ではないか

2019年04月25日 21時33分

ドバイ・ターフを快勝し、鮮烈な海外デビューを飾ったアーモンドアイ(ロイター)

【美浦トレセン発秘話】アーモンドアイ陣営が「ベストのレース選択ではない」との理由で凱旋門賞断念を先日、表明した。ビジネス的な観点から言えば「正論」だろう。年商100億円も夢ではない種牡馬と違い、一年に一頭しか子供を産まない繁殖牝馬に付加価値たる勲章は不用。夢への挑戦よりも、無事に血を残すことが牧場にとっては重要である。

 それでも…。忘れられないのは、ドバイ遠征中にクリストフ・ルメールが目を輝かせて語った次の言葉だ。

「今まで乗った中で一番強い。ボウマンのウィンクス、スミスのゼニヤッタ、キネーンのシーザスターズ…。アーモンドアイは僕にとって、そんなホースオブライフになってくれる存在だと思う」

 昨秋、ジャパンCを世界レコード(2分20秒6)で勝った際には、こんな見解も示した。

「どこからでも競馬ができる万能性、切れ味、スタミナ…。彼女はすべてを持ち合わせたパーフェクトな馬。世界のどこに行っても対抗できる能力を秘めると信じている」

 だからこそ思う。ビジネスではなく、スポーツの観点に立てば、その可能性にふたをする行為は競馬史において大きな損失ではないのかと。例えば大谷翔平は、2年待てば総額2億ドルの大型契約が可能でありながら、わずか55万ドルで海を渡った。そのリスク覚悟の挑戦が間違っていなかったことは、新人王のタイトルが証明した。

 ベーブ・ルースが100年前の人物であったように、歴史に挑める才能は、そうそう出現しない。かつて国枝栄調教師が「10年に一頭どころか歴史的レベルの一頭かもしれない」と愛馬を称したことを思えば、今回の決定には、どうしても無念さがつきまとう。

 おそらく文化の違いもあろう。同じ牝馬でも英国のエネイブルは凱旋門賞連覇後も現役を続行。豪州のウィンクスに至っては8歳まで走り続け、GI連勝記録を「25」に伸ばした。性別を問わず可能性にふたをしない――。そのチャレンジ精神を育むのは、競走馬へのアスリートとしてのリスペクトだ。かつて日本には「凱旋門賞に汚点を残した」と叱責を受けた名馬もいた。歴史的挑戦に勇気がいるのも確かである。

 改めて言おう。競馬はビジネス絡みのスポーツだが、その原動力は言わずもがな馬券の売上金にある。ゆえにファンの夢に寄り添うことも重要な競馬ビジネスだと思うが…。果たしてJRAを旗頭とした日本の競馬は、この先どこに向かうのだろうか。