【天皇賞・春】“最強の1勝馬”エタリオウ 平成最後のGIで歴史に名を残せるか

2019年04月23日 21時33分

異彩を放つエタリオウ

【天皇賞・春(日曜=28日、京都芝外3200メートル)得ダネ情報】平成最後のビッグレース、第159回天皇賞・春がいよいよ5日後に迫った。名だたるステイヤーが揃った中で異彩を放つのが菊花賞2着のエタリオウ(牡4・友道康夫厩舎)。GIで好走できる能力を秘めながら、なぜか2勝目を挙げることができない不思議な馬だ。シルバーコレクターとして人気を博した父ステイゴールドを超える“銀メダリスト”は、平成最後のGIで競馬史に残る勝利を手にすることができるのだろうか。

 最強の1勝馬――。過去にもそれなりにいたように感じるが、この定義に当てはまりそうな馬は、実はほとんど存在しない。

 確かに勝ちみに遅いと言われた馬は存在する。思いつくだけでもロイスアンドロイスにシックスセンス。しかし、天皇賞・秋→ジャパンCで連続3着と好走した4歳秋のロイスアンドロイスはすでに立派な“3勝馬”だった。皐月賞2着、ダービー3着に香港ヴァーズで2着だったシックスセンスも、4歳初戦の京都記念をきっちりと勝ち切った。

 当たり前のことだが、GIで勝ち負けできる馬なら、それまでにGI以外のレースを勝ってしまうもの。今回の主役エタリオウの父ステイゴールドは初タイトルの目黒記念(6歳時の2000年)までGIを含めて重賞で2着7回3着7回の“善戦マン”だったが、重賞路線に乗った時点で3勝していた。最強の1勝馬であり続けることは非常に難しいことなのだ。

 マカヒキ、ワグネリアンのダービー馬2頭など活躍馬が多数在籍してきた友道厩舎の中で「潜在能力だけなら厩舎の歴史の中でも屈指の馬」(大江助手)と言われているにもかかわらず、その戦績は〈1・7・0・2〉。馬券対象を外した2回は走る気をまるで見せなかった新馬戦4着と、スローペースを猛然と追い込み、大江助手が「珍しく能力を出し切ろうとした」と褒めたダービーの4着。対照的な舞台で対照的な競馬をしながら、その着順は同じだ。7回もある2着に関して言えば、わざとやっているのではないか? それはあり得ないが、そう思えるくらいの徹底した負けっぷりを披露している。

「やるな」と「オイオイ」を繰り返す現代競馬最高の“迷馬”が“名馬”となる日――。それが天皇賞・春となる可能性は決して小さくない。エタリオウの一番のセールスポイントは並外れた心肺能力。3200メートルのステイヤー決戦は自身の武器を最大限に生かせる舞台だからだ。

「とにかく真面目に走らない。先頭に立つとすぐ気を抜いてしまうし、ブリンカーを着けなかった時は内にササる悪癖まで見せた。なので、ずっとブリンカーを着用してきたんですけど、少しは大人になってこの馬なりにやる気になってきたのか、前走の日経賞では道中でハミをかみ過ぎる面を見せたじゃないですか。これは馬具の再調整が必要だな…とのことで今回は前回までよりも浅いブリンカーを着けることになりました」と語る大江助手の言葉を聞けば、ちょっとは進化しているようにも思う。

 だからといってすべてを肯定的に考えられない。なぜなら、エタリオウは周囲の状況に左右されやすいタイプ。手を抜けると思った瞬間、しっかりと手を抜く厄介な性格だからだ。「菊花賞は想定通りの悪くない展開だった。でも、エタリオウと並んで伸びてくれるはずのブラストワンピース(4着)が伸びあぐねたことで、馬なりのまま先頭に立ってしまった。その瞬間に最悪の展開に変わってしまったんですよ。フワッとしたところを見えない位置からフィエールマンに差された。あれが一番の負けパターン」

 同馬が好走する最高のパターンとして、大江助手が例に挙げたのはシュヴァルグランがキタサンブラックを捕らえた一昨年のジャパンC。

「能力的なことだけを言えば、本気なら負けられない。それくらいのレベルの馬です。だからこそ本当に展開がカギ。それこそキタサンブラックを目標にしてレースを進めたシュヴァルグランのJCのように、最後まで頑張ってくれる強い先行馬がいればいいんですが…。気を抜く時間をつくりたくないんです」

 指定席の“2”に落ち着いてしまうかどうかも結局は展開次第? この他人任せなキャラクターも愛らしいと言えば愛らしいが、能力的に「勝ち負けに加わらないということだけは考えられない」とのこと。ちなみに五十音順で割り当てられるGIの特殊ゼッケンでも「2」を背負っている。

 過去のどの馬よりも“2”の数字に愛された馬は、その呪縛を“八度目の正直”で解き放つのか、それとも“七度あることは八度ある”に終わってしまうのか――。ともあれ、平成最後のGIの行方を左右する最大のキーホースであることは間違いないだろう。