武豊&蛯名がエール「落馬重傷」北村宏の気になる容態

2019年03月07日 05時00分

落馬の直後。緑帽の蛯名騎手は間一髪でかわしたが…

 2日の中山競馬場で落馬重傷を負ったJRAの北村宏司騎手(38=美浦、フリー)が心配だ。JRAが発表した診断は「頭部外傷、意識障害、右側頭骨陥没骨折の疑い」。一方で「苦労人」「不屈の男」として知られるベテラン騎手に対し、ツイッターなどSNS上では年内絶望、騎手生命にも関わる大ケガなどさまざまな臆測が流れている。実際の容態はどうなのか。また復帰時期はいつになるのか。

 2015年のキタサンブラックでの菊花賞をはじめ、スピルバーグでの14年天皇賞・秋制覇などでGI制覇を飾ったJRAのベテランが、落馬事故に見舞われたのは2日の中山競馬1Rの3歳未勝利戦だった。1番人気に支持された北村宏騎乗のタマノカイザー(牡3・高柳瑞)に対して、ルメール騎乗のノワールムーティエが直線半ばで急に内側へ斜行し、接触。このアクシデントでタマノが落馬競走中止となった。この際、馬が転倒し、鞍上の北村宏は地面に叩きつけられた上に後続馬にも踏まれるなどした。またタマノに接触した後続馬ディーエスマグナムも転倒し、木幡育也も落馬した(人馬とも異常なし)。この件で、ノワールムーティエに騎乗したルメールは9~17日までの9日間(開催4日間)の騎乗停止処分が科された。

 落馬当日は「頭部外傷、意識障害、右側頭骨陥没骨折の疑い」と発表されていたが、千葉県船橋市内の病院での診断は「右眼上下、鼻付け根の複雑骨折、ならびにふくらはぎの筋肉損傷」。診断では3か月から半年の治療を要する重傷となっている。北村宏の騎乗仲介役を務める松本ヒロシ氏によれば「全治はわからない。ただ時間はかかりそう」と復帰の見通しは未定。ケガの中でも特にふくらはぎの腫れがひどく、血のめぐりが悪いために切開を行った。

 SNSなどでも北村宏を心配する声が数多く寄せられている。通算1918勝を挙げ、15年に騎手を引退した藤田伸二氏は「頭部とか顔面の損傷よりふくらはぎの切り傷の状態が酷いらしい。全治などは分からないが、かなり深刻らしい」とアクシデントの2日後にツイッター上でメッセージを掲載していた。

 また障害ジョッキーで、北村宏とは同期となる高田潤は「意識もあり、会話もできるそうですが、鼻の付け根とこめかみあたりに粉砕骨折があるのと、ふくらはぎがパンパンに腫れているため切開したままの状態みたいです。時間はかかると思いますが、ゆっくりしっかり治して帰ってきてほしいです」と仲間の復帰を期待する。他にも北村宏のツイッター上にはファンからの応援のメッセージが数多く寄せられている。

 JRAではこれまで93年1月に岡潤一郎騎手が落馬、その際に後続馬に頭を蹴られて1か月後に亡くなる事故があった。04年には新人の竹本貴志騎手が3月の中山で障害レースに騎乗し落馬、その際に頭を強打し、帰らぬ人となっている。

 一方、10年9月に落馬し頭蓋骨骨折となった横山典が驚異的な回復を見せ、48日でターフにカムバックしている。

 騎手はレースでの減量などで日々、体調管理が必須の職業で、調教でも連日馬にまたがる。常に細胞がスイッチがオンの状態、代謝している状態だけにケガへの対応力、回復力が常人の比ではない。

 引き合いに出されるのは武豊で02年の中山競馬で骨盤骨折の重傷を負い当時出た診断は全治半年。春シーズン絶望との臆測が流れるなか、なんと2か月後にカムバック。復帰2日目には重賞勝ち(アンタレスS=ハギノハイグレイド)、5月にはダービー制覇(タニノギムレット)の超人ぶりを発揮した。また、10年3月に落馬し、左鎖骨遠位端骨折した際は「復帰できないと思った」ほどの大ケガだったが、4か月余りでカムバックし、復帰翌週には勝利を飾っている。

 その武豊は今回の件に対して「意識はしっかりしていると聞いているので安心している。ただ、箇所が箇所だけに慎重に見極めて復帰してほしい」と経験者としてアドバイスを送った。

 また同じレースに騎乗し、目の前でアクシデントを目撃した蛯名は「おそらく北村の意識の中で、(技術のある)ルメールだったので安心している部分もあったのではないか。こういう事故はアクシデントではない。いくら馬に癖があったとしても乗っている者としてはあってほしくないこと。最近は人為的、不注意に見える事故が増えている。お互いの意識をもっと高く持っていきたい」と人為的なミスによる事故の多発に警鐘を鳴らし、「今までいろいろなケガに遭っても無事に戻ってきたので今回もそうあってほしい」と後輩にエールを送った。

 15年にはキタサンブラックで、菊花賞を制覇し、レース後に北島三郎オーナーと「まつり」を熱唱した北村宏。JRAでは存在感のあるベテランジョッキーだけに早い復帰を願いたい。