【チューリップ賞】ドナウデルタは2強に割って入るまである“小さな重戦車”

2019年03月01日 21時00分

丹念な手入れに、ご機嫌なドナウデルタ

【チューリップ賞(土曜=3月2日、阪神芝外1600メートル=3着までに4・7桜花賞優先出走権)栗東トレセン発秘話】昨年の最優秀2歳牝馬ダノンファンタジーが不動の本命なら、これに阪神JFで0秒3差(4着)のシェーングランツが対抗。GIIチューリップ賞の大方の予想はこうなろう。そう、馬券作戦で重要なのは“第3の馬”。大スポ本紙・松浪大樹記者が妙味ある馬探しの旅に出た。

 経験がすべてというわけではないが、そこに実績が伴った人物の言葉なら、耳を傾けて損はない。サッカーの三浦カズ、スキーの葛西紀明、そして競馬界ではもちろん武豊(野球は意見が分かれそうなので割愛)。“レジェンド”と呼ばれる人物の言葉に重みを感じるのは、背景に誰もが認める実績があるからだ。

「かわいそうなレースばかりしとるから、成績は悪いけどな。この馬、能力はかなりのもんを持っとるで」

 これ、一部に“レジェンド”と呼ばれ、敬愛を集めている方の担当馬に対する評価。石坂正厩舎の大ベテラン、久保卓也助手だ。ヴァーミリアンを筆頭とした多くの名馬に携わり、札幌競馬場以外の重賞を全て制覇しているこの久保助手の存在を知らなければ、記者仲間に「モグリ」と言われてしまう。そんなレジェンドの現在の担当馬こそがチューリップ賞に出走するドナウデルタなのである。

 もちろん、昨年の最優秀2歳牝馬ダノンファンタジーが崩れるシーンは想像しにくく、中山のオーシャンSを勝てそうなモズスーパーフレアを袖にして武豊が騎乗するシェーングランツも強い。「残り1議席を争うレース」というのが下馬評で、その“3頭目”を探す取材であったことも確かだ。「まあ、相手は強いけどな」と久保助手も強敵相手の戦いが簡単ではないことは理解している。

 それでも「この馬はバネがええのよ、バネが。スプリングが利いてるちゅうんかな。走る馬は大概がバネのええ馬が多いんやけど、この馬もそんなタイプ」と言われれば、どうしたって心が揺れてしまう。さらに「乗った感触はアグネスワールド(森厩舎所属時代に担当)にかなり近い。あれの小さい版やな。最初はそう思ったもんよ」と付け加えられれば、それなりにキャリアを積み、ちょっとしたリップサービスには動じなくなっている記者でも「マジかよ」と…。

 アグネスワールドは仏アベイドロンシャン賞、英ジュライCを制した名馬。欧州のスプリントGIを2勝する日本調教馬なんて、もう出現しないのではないか? 個人的にはそうも思っているだけに、そんな馬と似ている? 440キロほどしかない小柄なドナウデルタと重戦車のようだったアグネスワールドが? 驚きを隠せない。

「アグネスワールドはスピードばっかと思われているけど、実はバネのええ馬でな。一方のドナウデルタは小さいし、パワーなんてないと思われてるかもしれんけど、道悪もへっちゃらの感じで、牝馬と思えんくらいのしっかりとした走りをする。先週の坂路(4ハロン52・3―11・9秒)ですごい動きをしとったろ? あんな走りは力のない馬にできひんよ」

 前々走のデイリー杯2歳S(5着)は外に出せず、進路を内に切り替える大きなロス。前が壁になり、ゴール前まで追えるところがなかった前走のシンザン記念(9着)は、競馬の形にすらならなかった。そう、お宝を見つけてしまったかもしれない――。そんな気持ちで厩舎を去ろうとしたら、最後に「まだ馬が全然できていないけど、そんな状態でも末脚はしっかりしている。普段はヤンチャでも、走りだしたら冷静で、かかるところもない。個人的には距離が延びたほうがいい気がするんだよな」。

 そうはいっても、1勝馬のままでは先=オークスの見通しは立てられない。ならばここは桜花賞の出走権を獲得できる3着ではなく、賞金を加算できる2着までに入ってほしい――。先々の馬券作戦を含め、そう強く願っている。