日本人でいち早く取り入れた福永祐一が明かす「短い手綱のメリット」

2018年08月24日 22時00分

サングレーザーで札幌記念を制した福永

【トレセン発秘話】以前、福永祐一に教わったことがずっと頭に引っかかっていた。それは「日本のジョッキーは外国人に比べて手綱が長い」という指摘だ。以来、ジョッキーの手綱の長さを観察している。札幌で大暴れしているモレイラはとても短く、ルメールも手綱がピタッとしているが、やはり日本人は長い。果たして手綱の長短のメリットは? 複数のジョッキーに意見を聞いてみた。

 まずはM・デムーロ。「日本人に比べると僕は短いネ。小さい馬は長い手綱だとあまり良くないけど、手綱が短いと馬のテンションが上がる場合がある。その時は長い手綱の方がいいネ。(武)ユタカさんは手綱が長いから馬がリラックスしていますネ」

 そういえば福永も「キタサンブラックを長手綱でノビノビと走らせたのはユタカさんだからできたこと」と言っていたことを思い出した。

 本紙コラムでおなじみの蛯名正義は「短い方が馬とのコンタクトで反応が早い」と短さの利点を挙げつつも、「結局はその人の感覚だから、どっちが正しいってことはない。いかに馬に伝えて、それに馬がどう反応するかが答え。正しい長さはないと思う」。

 四位洋文も「人それぞれの感覚。車を運転するとき、しっくりくるシートの位置が人によって違うのと一緒かな」。

 つまり、明確な正解はない。そう結論付けて引き揚げようとすると、なんと札幌競馬場の入り口で今回のテーマのきっかけを与えてくれた福永に遭遇! 何といっても日本人で短い手綱をいち早く取り入れた“先駆者”だ。「これから妻と子供を空港まで迎えに行くんですよ」と言う彼にお願いし、タクシーの中でたっぷり「手綱理論」を語ってもらった。では、ユーイチ先生の大演説をどうぞ!

「最近は特に短めに持っていますね。長手綱って首が使いやすくてスタートの出が速くなるけど、横のブレを修正しにくいんです。手綱を引っ張るにしても、短ければ拳をちょっと内側に向けるだけで締まるけど、長いともっと大きな動きをしないといけない。馬を抑えるときも長手綱だと重心を後ろにかけないといけないが、僕は道中のバランスは前に重心を置きたいので短い方がいいんですよ。短いデメリットはゲートで馬がもぐったときに体を持っていかれるリスクだけ。やっぱり今の時代は短く持って馬を抱える技術が大事になっているんでね」

 立て板に水のユーイチ先生は、見事に札幌記念を制したサングレーザーの話も絡めて、こんなことまで教えてくれた。

「長手綱はハミを外せるメリットがあるけど、そもそもハミを外すっていう概念が日本にしかない。だから必要な技術じゃないんですよ。ハミを外して馬をリラックスさせないと脚がたまらないっていう考えが日本にはまだ根強く残っていますが、サングレーザーってハミをかんでたでしょ? かかっても手綱を短くして抱えて乗れば脚はたまる。よく“あー、かんでる”って言われますが、僕からしたら“かんでますけど、何か?”って感じ(笑い)。あのレース、もし長手綱だったら、馬を抱えられなかったでしょうね」

 短い手綱がもたらした勝利――。この後も雄弁に語ってくれたユーイチ先生は「外国人の中でも手綱が一番短い」というモレイラの強さの秘密(詳細は別記事「WASJ(1)」)にも言及した。