【日本ダービー・後記】ワグネリアンで悲願達成! 福永の勝因

2018年05月29日 21時32分

12万余の観衆に左手を突き上げて勝利をアピールする福永

 27日、東京競馬場で行われた競馬の祭典・第85回日本ダービー(芝2400メートル)は5番人気のワグネリアン(牡・友道康夫厩舎)が優勝。2015年に生まれたサラブレッド6955頭の頂点に立つと同時に、鞍上の福永祐一(41)は19度目のダービー挑戦で感涙の初優勝となった。1番人気で7着に敗れた皐月賞の汚名を返上し、平成最後のダービー馬となった勝因はどこにあったのだろうか?

 混戦模様と言われた今年のダービーで特徴的だったのは、デビューから無敗で駒を進めてきた1番人気ダノンプレミアム(6着)、2番人気ブラストワンピース(5着)の2頭が“皐月賞を使っていない”人気馬だったこと。結果は皐月賞1番人気(ワグネリアン=7着)と皐月賞馬(エポカドーロ)の1、2着。いわゆる“王道組”が強いことを見せつけた。ともすればダービーの1着賞金2億円に対し、1億1000万円と約半分しかない皐月賞が軽視される歴史の流れを作りかねなかったが、競馬の神様がそれを許さなかったということか。

 レースは5ハロン通過60秒8のスロー(前後5ハロン差は2秒5)。前後半の差が2秒4のハイペースだった皐月賞とは真逆の展開になった。「外枠が決まった時点で戦法の選択肢が2択くらいしかなくなり、かえって腹をくくれた。〝この乗り方ができなければ勝てない〟という気持ちで臨んで、一番いい形にはめ込めました。2コーナーを回ったあたりでコズミックフォースの後ろにスッと入れたらリラックスして“これなら”と思った」と道中を振り返った福永。

 ダノンプレミアムの1番枠が過去10年で4勝(2着2回、3着1回)で“神枠”とまで呼ばれたのに対し、17番枠は1度の7着があるだけで、あとはすべて2桁着順の“死枠”。これを克服して勝利をもぎ取った力量は称賛されていいだろう。

「最後は気合。(自身の)デビュー戦の時よりも無我夢中で追った」と振り返ったゴール前。「体幹のブレがない。あのサイズ(450キロ)の馬ができる競馬じゃないんだ。正攻法でねじ伏せましたから」という最強馬らしい堂々の勝利だった。

「皐月賞に向けての調教では、あの時はそれがベストと思ってテンションが上がることを考慮して負荷を軽くしたが、ダービーは春最後のレース。しっかり負荷をかけて、馬がそれに応えてくれました」とは友道調教師。16年のマカヒキに続く2度目のダービー制覇となった。これまでのシュヴァルグランなどの長距離実績に触れ「僕自身が長距離が好きなんで、自然とウチの調教は長距離に向くようになっていくんだと思う。それにしてもダービーはやはり別格。今日勝ったけど、また来年も勝ちたいですね」。
 東京競馬場から直接ノーザンファーム天栄(福島県)に放牧に出されたワグネリアンは、夏場は休養して秋に備える。さらに距離が延びる10・21菊花賞で“友道流”がまたひと回り大きな花を咲かせそうだ。

 福永にとってのダービー制覇は、悲運の事故でターフを去ったかつての天才ジョッキー・父洋一さんからの大願だった。「父が一番勝ちたかったレースはダービー、とデビューしたころから聞いていた。(その思いを父は)志半ばで断たれてしまったけど、親父の名前で(競馬の世界に)入ってきて、ようやく息子として誇れる仕事ができました」と福永。ダービーの重さを誰よりも知る男が、ようやくひと息つける場所にたどり着いた瞬間だった。