【桜花賞】松永幹夫調教師が語る調教術の秘訣と4戦無敗ラッキーライラックの凄さ

2018年04月03日 21時31分

松永幹夫師(左)と野村功氏の間でポーズを取るラッキーライラック

 2018年の3歳クラシックロードがいよいよスタートする。開幕戦の第78回桜花賞(日曜=8日、阪神芝外1600メートル)は4戦無敗の怪物牝馬ラッキーライラックで断然ムードだが、もう決まりなのか? 管理する松永幹夫調教師(50=栗東)をマスコミでは誰よりも知る“馬人”野村功元調教助手が猛アタックをかけたところ…。同じ釜の飯を食った“仲間”に根掘り葉掘り聞かれた同師は核心的な話を次々と語った。

 野村元調教助手:まいど! こない改まって話をすんのはなんか照れるね。

 松永幹調教師:ですね(笑い)。よろしくお願いします。

 野村:ラッキーライラックの前に聞いておきたいんやけど、なんでミキオと牝馬ってこない相性ええの? レッドディザイア(09年秋華賞馬)を管理しとったし、騎手時代は桜花賞だけでもキョウエイマーチ(97年)にチアズグレイス(00年)でVやろ。ほかも牝馬でGIを勝った(※後述のプロフィル参照)。やっぱ人間だけやなく馬も色男に弱いいうことなんかな。

 松永:野村さんよりは牝馬に人気あるかもしれませんね(笑い)。

 野村:おい!

 松永:でも、不思議と牝馬に縁があるのは確か。レッドディザイアも本当にいい馬でした。最後はかわいそうな形で引退(鼻出血)しましたが、海外の競馬(ドバイのマクトゥームCR3)も勝たせてもらったし、本当にあの馬との日々は大事な財産です。

 野村:となると聞きたくなるのが、そのディザイアとライラックの比較やねんけど…。

 松永:レッドディザイアはとにかくパワフルでした。あの馬はこの時期から急激に良くなったんですよ。正直、オークスの時なんかは「これならブエナ(ビスタ)に勝てるでしょ」って思うほどでしたもん(09年のオークスで単オッズ1・4倍のブエナビスタにレッドディザイアはハナ差の2着)。逆にラッキーライラックは2歳時にすでにGⅠを勝っている。そのへんは少し違うでしょうね。

 野村:逆に共通点とかはあるんかな。

 松永:それはもう、どちらもしっかりとした馬体があること(ディザイアは476~494キロ)。この時期の牝馬って、それが一番の強みだと思います。負荷をかけてもへこたれない、そしてカイバもたくさん食べてくれるとなると、さらに鍛えることができる。

 野村:プラスの循環やね。正直、この時期の牝馬が普段乗りからウッド2周なんて過酷や思うで。

 松永:ですよね。でもそのメニューをしっかりこなしてくれるんだからすごいですよ。しかも、それだけ負荷をかけてもカリカリすることもない。本当におとなしい馬なんですよ、ほら。

 野村:確かに。こんな訳分からんオッサンが近寄っても動じへんもんね。

 松永:人懐っこくて手がかからない。それでいてオンとオフの切り替えがしっかりできる。この気性の良さも結果につながっていると思います。

 野村:前走のチューリップ賞はそれまでと違う前からの競馬。石橋君は「こういう競馬も試してみたかった」みたいなこと言うとったね。ステップレースとしては予定通りっちゅうことかな?

 松永:僕が指示を出したわけじゃないけど、彼なりにさらにいいところを吸い出そうと考えてくれているんでしょう。

 野村:ミキオの指示とちゃうの。

 松永:僕は基本的にジョッキーにあれこれ言わないです。騎手時代、橋口先生(弘次郎元調教師)の馬に乗せてもらうことになり「どう乗ったらいいですか?」って聞いたら「それは自分で考えてください」って言われまして。あの影響ですかね。ちなみにウッドの長めで鍛え込んでいくのは松田先生(博資元調教師)のまねです(笑い)。

 野村:人のええところはどんどんパクらなあきまへん(笑い)。ま、実際に石橋君の言う通り…。

 松永:ええ。こちらとしても新しい面が見られてすごく良かったと思います。またひとつ階段を上がれた感じですかね。人間が出す課題をしっかりこなしてくれるのがすごいところですよ。

 野村:で、その後の調整はどういう感じ? 2週前は坂路、そして1週前はウッドやったね。

 松永:それがこの馬のパターンです。最終追い切りはウッドで。まあ、チューリップ賞の時の当週はサラッとでしたけど、今回は本番ですし、ある程度意欲的にやるかもしれません。

 野村:そういえば、前走はかなり体が増えとった(プラス10キロ)。

 松永:予定通りです。成長分もありますが、次を見越して体をつくらないといけないですから。今回は数字自体あまり変化はないかもしれないけど、中身が違います。

 野村:何もかも順調。雨降り馬場もこなしてるし、もう大丈夫でっしゃろ。相当自信あるんやろ。

 松永:でも、こういう立場で桜花賞に向かうのって初めてじゃないですか。なんか変な感じなんですよね。ディザイアの時はブエナがいたし、騎手時代もそう。チアズグレイスの時なんかもサイコーキララ(00年の桜花賞は4戦無敗で単オッズ1・8倍のサイコーキララが4着。6番人気のチアズグレイスが勝った)がいたりで結局、追いかける立場だった。それに初めて戦う相手も出てくるわけですから。

 野村:なるほどね。でもオレは勝つと思っとるけど、次は2400メートルという距離に立ち向かうことになる。そのへんは。

 松永:僕は長いところでこそ真価を発揮できると思っています。もちろんまずは桜花賞ですが、オークスこそ楽しみなんじゃないでしょうか。

 野村:じゃ、桜花賞勝てば、その時点で2冠達成と思ってええかな(笑い)。

 松永:そうなるといいですよね(笑い)。

☆まつなが・みきお=1967年4月10日、熊本県生まれ。86年3月1日に騎手デビューし、2006年の引退まで山本厩舎に所属。JRA通算1400勝。91年オークス(イソノルーブル)、96年秋華賞(ファビラスラフイン)、05年天皇賞・秋(ヘヴンリーロマンス)など、GI・6勝はすべて牝馬だったことから“牝馬の松永”と言われた。07年3月から厩舎を開業してJRA通算285勝(重賞14勝=1日現在)。

☆のむら・いさお=61歳。元JRA調教助手。1971年に栗東・坪重兵衛厩舎に所属。その後は山本正司、池江泰郎など35年間で数々の厩舎に在籍。トゥザヴィクトリー(01年エリザベス女王杯)、ステイゴールド(01年香港ヴァーズ)など数々のGI馬の背中にまたがる。