“馬を変える”偉大なジョッキー

2013年02月01日 09時00分

【トレセン発秘話】引退を表明した安藤勝は誰がどんなことを聞いても気さくに取材に応じてくれる騎手だったが、記者はそんなアンカツをムッとさせたことがある。JRA移籍元年だった2003年の菊花賞前に「地方の短い距離を中心に乗ってこられたので芝の長丁場は慣れない面もあるんじゃないですか?」と聞いた時だ。「そんなもん、馬に乗ってしまえば関係ないわ」。即座に強い口調で否定された。

 そんなものかといぶかった坂路野郎だが、この時菊花賞を勝ったのは安藤勝騎乗のザッツザプレンティ。しかも、橋口調教師が「あの勝利は騎手の腕以外の何物でもない」と鞍上の好騎乗を絶賛したVだった。坂路野郎の“仮説”の浅はかさを思い知らされたレースだった。

「馬を変えることができるジョッキー」

 安藤勝のことをこう評する人が多い。ザッツザプレンティの菊花賞もさることながら、橋口調教師の中で一番思い出に残っている安藤勝の騎乗は、1999年京阪杯のロサードだという。「それまでモマれ弱くて外を回らないと結果を出せない馬だったが、安藤君が乗って馬群をさばいて鮮やかに勝った時はこんな競馬ができるんだとビックリした」

 また、助手時代から無数のジョッキーを見てきた池江調教師は「馬を変えることができるのは安藤さんと柴田政人(現調教師)さん」と言い切る。「親父(泰郎元調教師)のキュウ舎にいた時、どうしても勝ち切れない馬がいたんだけど、安藤さんが乗ったら今まで見たことがないような脚でアッサリ勝ってしまった。それ以降、その馬は稽古でも行きっぷりが変わってしまった」。今年ドバイを目指すトレイルブレイザーを覚醒させたのも安藤勝だったという。
“馬を変える”偉大なジョッキーの引退…なんとも寂しい。

(栗東の坂路野郎・高岡功)