「外れ馬券経費裁判」逆転勝訴の裏

2016年04月23日 10時00分

競馬場に散らばる外れ馬券

 これで少しは安心か――。所得税の申告で競馬の外れ馬券代を経費に算入できるか争われた裁判の控訴審判決で、東京高裁は21日、経費と認めなかった一審判決を取り消し、外れ馬券代も経費に認める逆転勝訴を、北海道の男性に言い渡した。すでに似たケースで最高裁が経費に算入できるとする判断をしていたが、今回の裁判では自動購入ソフトを使用していたか否かが焦点だった。今後は「裁判によって判断が割れるのは分かりにくいので法整備が必要」との声も永田町関係者から上がっている。

 北海道の40代男性公務員は、2005年から10年にかけて、インターネットを通じて約72億7000万円分の馬券を購入していた。利益は約5億7000万円で、払戻金は「雑所得」に当たるとして外れ馬券代を経費として申告。しかし、税務当局は経費に算入できない「一時所得」だとして、約1億9000万円を追徴課税した。これに男性が課税処分の取り消しを求めて訴えていたわけだ。

 一審判決では「一般的な競馬ファンの購入方法と大きな差はなく、偶然の利益が積み重なっただけ」と、課税処分を適法としていた。

 これまでにも、外れ馬券代が経費と認められるかをめぐっては各地で裁判になっている。

 07~09年に払い戻しの所得を申告しなかったとして、大阪国税局に所得税法違反容疑で告発された大阪の元会社員のケースが有名だ。このとき、大阪地裁は男性が自動購入ソフトで機械的に馬券購入しており、一時所得ではなく雑所得になると認定。外れ馬券代を経費と認めていた。

 その後続いた最高裁も「営利目的で継続的に購入していた場合は経費に算入できる」とこの判断を支持。大阪の男性の場合は外れ馬券代が経費として認められていた。これを受けて国税庁は通達を改正。しかし、通達では外れ馬券代を経費と認める雑所得となるのは、自動購入ソフトを利用した場合に限定していた。

 今回の北海道の男性が一審で経費と認められなかったのは、自動購入ソフトを使っていなかったからだった。このため、購入方法の違いを東京高裁がどう判断するかが注目されていた。

 菊池洋一裁判長は「回収率が100%を超える馬券を有効に選別する独自のノウハウに基づき、網羅的な購入で多額の利益を恒常的に上げていた」とし「最高裁が経費算入を認めた購入方法と本質的な違いはない」と結論づけた。

 つまり、自動購入ソフトを使っていなくても、外れ馬券代は経費になるとする初の判断を出したわけだ。

 北海道の男性の弁護士は「最高裁判決の趣旨に合致し、一般国民の感覚にも沿った妥当な判決だ」と評価。

 そもそも最高裁は自動購入ソフトの使用にこだわっていなかったとの見解だ。

 一方、札幌国税局の後山隆司国税広報広聴室長は「国側の主張が認められなかったことは残念だ」とコメントした。

 競馬ファンはネットで「当たり前だ」「地裁は最高裁の判例の意図をまったく理解できていなかった」「実態に合っていないから法律を変えるべき」など、判決を前向きにとらえる意見が多かった。

 こうなると、法律など制度に不備があるとしか思えない。競馬に詳しい永田町関係者は「判決は当たり前ですよ」とした上で「競馬法なのか所得税法なのか、ほかの法律なのか分かりませんが、実態に合ったものに変える必要があるかもしれません。例えば宝くじみたいに当たった分には税金がかからないようにするとか。国税庁の通達も変えた方がいいでしょう」と指摘している。

 一般の競馬ファンの外れ馬券代が経費として認められるわけではないが、競馬をより楽しむために安心できる法整備が進んでほしいものだ。