JRAの騎手性善説と新ルール

2013年08月30日 14時00分

【競馬増強へ…現場からの提言】JRAの根底には“性善説”があるのをご存じだろうか。

「やり得」と呼ばれるラフプレーは「自分が勝ちさえすれば、周囲はどうなってもいい」という考えによるものだが、JRAが免許を与えている騎手にそんな思考をする人間はいない――。これが根底にある以上、JRAは新ルールを利用したラフプレーを公式に認めることができない。

「抑止力となる制裁は以前よりも厳しいものになっています。3か月以内に複数回の騎乗停止を受けた場合は加重するようになりましたし、そのレースが重賞であったかどうか、勝ち馬であったかどうかなども総合判断の要素になります」とは栗東トレセンの技術参事役・福田正二氏。

 昨年までなら10万円の過怠金で済んだ事例も今年はアウト。騎乗停止は確かに増えているが、それがこれまでとの比較でラフプレーが増えたこととイコールにはならない。過怠金をベースにしての比較なら、むしろラフプレーは減ったとさえいえるそうだ。

「今回の新基準はセーフありきのルールではないんですよ。秋には多くの外国人騎手が来日するでしょうが、彼らには日本の騎手よりも厳しいハードルを課しています。期間中に2回の騎乗停止で翌年は免許が交付されませんし、JRAで受けた厳しい制裁は海外でも適用される。“やり逃げ”を許さないための措置といえるでしょう」(福田氏)

 容赦のない制裁で対応するJRAの姿勢は理解できた。ボートレースのFマークのような“現在の事故点”を明記するメディアもこれからは出てくるかもしれない。いずれにしろ騎手にとって住みづらい世界になったのは確か。だからこそ新ルールのもうひとつの問題点とされる「ペナルティーを受けるのは騎手だけ」という現状についても深く考える必要がある。“任命責任”とでもいうべきか。

 馬主、厩舎サイドもJRAから登録や免許を与えられている立場。“性善説”はここにも適用されているが、それでもファンの猜疑心を完全に消し去ることはできない。例えば「処分を受けた騎手がその騎乗馬に乗ることは永遠にできない」といった厳しい措置。これはさすがにやり過ぎだが、それに準ずるものは必要かもしれない。馬の名誉を守り、騎手の立場を守る。これは主催者であるJRAにしかできないことだ。

 最後に2週にわたって取り上げた新ルールに対するJRAの考え方を明確にしておきたい。

「半年間、運用した段階で変える必要性は見当たらない。これが現在の見解ですが、ラフプレーが増えて、レースの安全が保てないのであれば、導入した今回の判断基準は見直すことも考えなければなりません」

 日本のクリーンな競馬はこの新ルールでも損なわれないことを期待したい。