故浅見国師の後輩が継ぐ革新的調教

2012年06月06日 10時00分

【トレセン発秘話】5月28日に死去した浅見国一元調教師はゴム製の腹帯、馬運車での当日輸送など、現代競馬の〝常識〟をいくつも作り上げたアイデアマンだったという。

 試行錯誤される新たな調教手段、調教方法は時に周囲から白い目で見られ、批判される。それをはねのけ、技術を進化させてきた先達の偉業は決して忘れてはいけない。

 例えば接着装蹄。クギでは支え切れない、爪の厚さのない蹄に効果を発揮する蹄鉄の装着法だが、これを一番最初に始めたのは中尾謙太郎元調教師だったという。「装蹄師の西内荘さんと一緒にナリタハヤブサというオープン馬でやってみたのが最初だった。当時はそんな発想はなかったし、最初はJRAからもいろいろ言われたみたい。時代の最先端をいっていたということだね」とは、おいの中尾調教師。

 また、橋口調教師は海外研修で見たウッドチップの調教コースにひかれ、導入をJRAに強く提案。チップを敷いた坂路がオープンすると、いの一番に活用し成績を劇的に上げた。しかし開設当初、調教師の中には「あんな真っすぐなコースで稽古して競馬ができるか」と批判的だった人間もいたとか。

 さらに坂路2本乗りが主流だった時代、1本で調教することを始めた音無調教師には「それだけでは量が足りんやろ」と言う調教師がいたというが、同厩舎はその手法で成績を上げ、現在の栗東では2本乗る厩舎は少数派になっている。

 その他、松田国厩舎が始めた集団調教、乗り運動の重視や、ポリトラック素材の導入…今なお調教技術は進化しており、それが日本馬のレベルの底上げにひと役買っている。香港馬をものともせずレコードで決まった先週の安田記念は、改めて日本馬が世界レベルであることを知らしめた。次の革新は、果たして何か?

 (栗東の坂路野郎・高岡功)