【有馬記念】オジュウチョウサンで挑む武豊の決意と覚悟「結果で応えるしかない」

2018年12月19日 21時36分

名プロデューサー武豊はオジュウチョウサンをどう演出するのか!?

 1990年オグリキャップ、2006年ディープインパクト、17年キタサンブラック。武豊ジョッキー(49)のグランプリVには常にドラマがあった。“平成最後のグランプリ”第63回有馬記念(23日=中山芝内2500メートル)には異色中の異色キャラ「ハードル界の絶対王者」オジュウチョウサン(牡7・和田正一郎厩舎)とのコンビで挑む。本紙だけがお届けする独占ロングインタビューで名手…いや「名演出家」は勝算はあえて語らず、決意と覚悟を伝えた――。

 ――有馬記念の騎乗は28回目。実は初経験のことがある

 武豊:そうなの? うーん、なんだろ…。あ、関東馬でしょ! 有馬は全部、関西馬だったな。関東馬は初めてかぁ。

 ――オジュウチョウサンの調教で美浦には

 武豊:今週は乗りに行かないよ。美浦に慣れてないし、馬のクセもある。最終追い切りは慣れた人が乗るのが一番。向こう(陣営)にも「こっちでやるので大丈夫」って言われてるし。それより香港で騎乗停止になったときは真っ先に有馬が頭に浮かんだ。大丈夫なのかって。

 ――ディープインパクトで有終Vを決めた有馬記念の前も…

 武豊:そうなのよ。あの時も同じように香港で騎乗停止になって…。今回も香港ジョッキークラブに説明したら、騎乗停止の日にちを有馬の後(の26~29日まで)にしてくれたみたい。本当に良かったですよ。

 ――ファン投票3位での出走。オジュウチョウサンの人気はやはり絶大

 武豊:たぶん印は薄いけど、馬券は売れるって感じでしょ(笑い)。最近はよくオジュウのぬいぐるみに「サインして」って言われるわ(笑い)。この馬から競馬の新しい魅力を感じる人も多いだろうし、いいことだと思いますね。

 ――(マカヒキやクリンチャーといった)複数からの騎乗依頼に葛藤はなかったのか

 武豊:まあね、いろんな人の立場があるから言いづらいけど…。一番最初にオファーをいただいたのはそう(オジュウ)だし、(長山尚義)オーナーがずっと(武豊で有馬記念と)言ってくれてましたから。

 ――迷った末の決断

 武豊:もちろんです。どれも魅力的で、どれも乗りたかったけど、1頭しか乗れないからね。

 ――競馬界を盛り上げる〝使命感〟みたいなものもあったのでは

 武豊:それは何とも…。そちらが思うことで(笑い)。ただファンからダイレクトに「乗ってほしい」「乗ってください」って言葉はたくさんもらっていました。

 ――特別なパワーをもらえたり

 武豊:それはありますよね。勝ったらファンは喜ぶだろうなって。オジュウに初めて乗ったとき(開成山特別)の盛り上がりはビックリしたし、パドックではみんな写真を撮っていた。前走(南武特別)にしても雰囲気は完全にメインレース。その日はメインの京王杯(2歳S)も勝ったんだけど、オジュウの9Rの方が盛り上がってたからね。それはちょっと寂しかったかな(笑い)。

 ――他の馬にないオジュウチョウサンの魅力は

 武豊:ドラマがあるよね。初障害はタイムオーバーだったんでしょ。ビリを走っていた馬が、ちょっとずつ強くなって、やがては障害のチャンピオンになり、しかも今度はグランプリの有馬に出るんだから。もちろん、こんな馬に乗ったことは今までなかった。誰も気付かない隠れた才能や素質って馬にはあるんだなって改めて思いましたね。諦めずに粘り強く、辛抱強く育てるのも必要なんだって。

 ――育ててきたといえば石神深一騎手の存在も

 武豊:そりゃあ、大きいですよね。オジュウチョウサンといえば石神だし、石神といえばオジュウチョウサンだからね。

 ――乗り替わりはショックだったようだが、(武豊騎手から)かけられたある言葉で吹っ切れたとか

 武豊:う~ん、覚えてないですね。

 ――会って一言「悪いね」って。それでかえって前向きになれたとか

 武豊:へぇ、そうだったんですか。その気持ちは同じ騎手だから当然、分かりますよ。でもね、僕はそのへんは割り切ってます。たぶんファンの中には「今まで乗ってきた石神が乗るべき」って言う人もいると思う。だからこそ僕は結果で応えるしかないんですよ。それこそオジュウのお父さんのステイゴールドのときもそうだったから。

 ――熊沢重文騎手は乗り替わりになった時、「悪い感情もあった」と振り返っている

 武豊:うん、だって熊沢さんはステイゴールドが悪いころからずっと乗っていたから。僕に替わったときは複雑でしたが、その時も〝結果を出すしかない〟って思った。

 ――今回も同じ

 武豊:結果を出さないと、みんながイヤ~な感じになるんですよ。オーナーも、調教師も、石神も、僕も。「どうせ負けるなら石神でいけば良かった」ってなるでしょ。だからこそ(前2走は)勝ってそれを払拭できて良かった。勝てばみんなが救われるところはあると思う。

 ――平成最後の有馬記念。ダービーとはまた違う独特な雰囲気がある

 武豊:ダービーは華やかな「祭典」。有馬は「勝負」って感じかな。暮れの悲壮感が漂う中で行われるレース。1周目のスタンド前がすごく沸くのも独特ですよね。オグリキャップが勝ったときに見たスタンドはスキマが全くなくて全部、人。それが揺れていた光景は忘れられへんなあ。

 ――ちなみに有馬記念後の年末年始は

 武豊:30日は競輪グランプリに行って、元日は香港で競馬観戦っていうのが毎年恒例。もう何十年も日本で年越ししていないなぁ。でも、紅白(歌合戦)は向こうの国際チャンネルで見ますよ。

 ――JRAが絡まない競馬なら馬券も自由に買える

 武豊:元日から買うけど、全く当たらないね。競輪の方が当たるかも(笑い)。

 ――予算のほうは

 武豊:その日の軍資金の状況もあるけど、競輪グランプリは50万~60万くらいいくかな。でも競馬はそんなに買わない。基本、馬券って当たらないと思ってるから(笑い)。

 ――その前に我々が儲けたい

 武豊:有馬記念では数々のドラマが生まれてきましたから。今年もどんなレースになるのやら。相手は日本を代表する強い馬たちだけど、堂々と乗って、皆さんのクリスマスプレゼントになったらいいですね。