武豊、福永、的場文男が語る「引き際の美学」

2018年09月07日 21時30分

武豊

【トレセン発秘話】水曜の調教取材を終えて記者席に戻ると、広島の新井貴浩内野手(41)が、今季限りでの現役引退を表明するニュースが飛び込んできた。

 第一印象としては「とても潔い!」と感じた。スポーツ選手や芸能人は基本的に需要がなくなれば必然的に終わりがくる。それはジョッキーの世界も同じだ。馬主や厩舎からの騎乗依頼がなくなれば即引退というシビアな世界。ただ、それ以前に自ら限界を悟って辞める場合もあれば、調教師試験を受けて転身する、前向きな選択肢もある。今回は過去の取材ノートを引っ張り出して、一流ジョッキーたちの「引退論」を公開――。

 まずはJRA4000勝まで「マジック5」のレジェンド・武豊から。

「もう49歳なので“いつまで続けるんですか”とか“辞めたらどうするんですか”と聞かれる機会も自然と増えましたけど、現実的にまだ真剣に考えたことはないし、次のことも考えてないのが正直なところ。自分が他のことをしているイメージが全く湧かないですね」

 ある騎手は「ユタカさんは生まれながらの馬乗りのプロ」と称した。確かに調教師のスーツ姿が全く想像できない。

 一方、ダービージョッキー・福永祐一は少し違う考えを持っている。

「もちろん、依頼されなくなったら辞めるしかないけど、その前に楽しくなくなったら辞めるかな。生活のため、お金のためだけに続ける気はない。生活のためにやっている人を否定する気は全くないですが、自分の中ではそう。だから今は、好き勝手やろうって思う」

 2世ジョッキーとして大成功を収め、次は調教師か。いずれにせよ新井貴浩のような、きれいな引き際になりそうだ。

 最後は地方競馬7152勝の日本新記録を達成した大井の鉄人・的場文男。

「そんなに長くは乗りませんよ。もう年だから…」と切り出したものの、「記録を100くらい伸ばして。そのへんが辞め時かなぁ」。

 7日は62歳の誕生日。年齢とは裏腹に、バイタリティーは若手以上だ。ひとたび話しだすと、もう止まらない。座っていても身ぶり手ぶり、最後は立ち上がって熱弁する。自他ともに認めるおしゃべり好きの内田博幸でさえ、「的場さんは俺の10倍しゃべるよ」。そのパワーに圧倒されるという。となると前述の2人よりも意外に引き際が遅かったりして…。