【JRA女性最多勝タイ】藤田菜七子の男社会の渡り方

2018年08月20日 17時00分

タイ記録をマークして笑顔がはじける菜七子。関係者への感謝も忘れない

 藤田菜七子(美浦・根本厩舎=21)が19日、新潟3Rの6番人気トニーハピネス、同7Rの8番人気ライゴッドで勝利して自身初の1日2勝をマーク。今年のJRA14勝目は、増沢(旧姓・牧原)由貴子元騎手の持つJRA女性最多勝利記録とタイの34勝目になった。JRA女性騎手としては初の1日複数回勝利も記録。常に「次の1勝を目指します」と話して階段を上ってきた菜七子は、男社会の中で存在感を示す新たな戦いに挑むことになる。

 札幌=札幌記念、小倉=北九州記念。3場開催で重賞が組まれていない日曜(19日)の真夏の新潟を盛り上げたのは菜七子だ。まず、3R。トニーハピネスに騎乗してポンと好スタートを決めると、積極的にハナへ。ゴール前では後続の猛追にあったものの、3/4馬身差でしのいだ。21歳での初勝利。3連単325万円超(入線は6→13→5番人気の順)の波乱を演出した菜七子は「ゲートが上手で、競馬センスがありますね。自分のペースを守って走れましたし、最後も一杯になりながら踏ん張ってくれました」と笑顔で振り返った。

 7Rのライゴッドでも先手必勝。絶妙のペースで主導権を握ると、直線は後続もなすすべなく、1馬身1/4差をつけて押し切り、メモリアルなJRA通算34勝目を飾った。

 女性騎手の1日複数回勝利は過去に、リサ・オールプレス(旧名リサ・マンビー時を含む)が2度達成しており、菜七子は3例目。菜七子は今年14勝のうち、1番人気は一度もなく、6回は5番人気以下の伏兵で勝っている。

「あと何勝すれば(記録を更新する)と周りの方から言われて、それは知っていましたが、あまり気にせずやっていました。素直にうれしいです。たくさんの馬に乗って勝つことができたのはオーナーや調教師さん、厩務員さんなど多くの方のおかげです」

 記録にも舞い上がることなく、いつも通り関係者への感謝を口にした菜七子。「注目されるのはありがたいですが、(女性というよりも)一人の騎手として活躍していきたい」

 その後の8、12Rでは10、5着に敗れて一気の記録更新とはならなかったが、菜七子が常に目指す“次の1勝”は早ければ今週末にも…。女性ジョッキーの記録を次々に塗り替える快進撃だが、本人は「女性初」「女性通算」という類いの記録達成は本望ではない。なぜなら、先日のインタビューでお伝えした通り「女性だからではなく、強くなって注目されたい」という確固たる気持ちがあるからだ。

 男女に関係なく他人に勝ちたい――。そんな負けん気の強さは幼少期からあった。菜七子はインタビュー中、こんなことも語った。

「子供のころから負けず嫌いでしたね。とにかく自分の好きなことに関しては負けたくなかった。勉強は嫌いだったので負けても全然、構いませんでしたけど(笑い)。空手と剣道(ともに有段者)をやってましたが、特に空手では一緒に始めた友達には負けたくなかったです」

 女性だから取り上げられる状況をハッキリと「嫌です」とも言い切った。これまで競馬で流した涙は、すべて悔し涙だ。ダービージョッキー福永祐一のうれし涙について「いいですね~」と言って苦笑。「涙は人には見せちゃいけないっていう気持ちはありましたが、悔しくて…っていうことはありました」と明かした。

 勝ち気な一面を随所に見せる菜七子は過去にとらわれず、常に前だけを見据えている。最も印象的だったのが、トレセンでの取材中に漏らした言葉だ。

「私はあまり過去を振り返りません。いい思い出だったなぁとかは思いますけど、過去に戻りたいと思っても戻れるわけではないので。だから写真もあまり撮らないし、見返したりもしない。モノにも執着しません。基本的に前だけを向いていたいと思っています」

 女性最多勝記録は近日中にも達成されるだろう。そうなれば、もう過去の女性記録と比較されることはない。これからは正々堂々、男子の一流どころとの勝負。ようやく菜七子が追い求めてきたスタート地点に立つことになる。