
【POGマル秘週報】12日の調教後、友道厩舎で安田助手と談笑していると、高岡記者が「グシシ」と笑いながら、こちらに接近してきた。当コラムと同日掲載の「トレセン発秘話」用に足を運んだことはミエミエ。もちろん、お目当ては宝塚記念(日曜=24日、阪神芝内2200メートル)に出走するヴィブロスだろう。
当コラムの主役はドバイ帰りでも絶好調の彼女ではなく、彼女のおいに当たるブラヴァス(牡=父キングカメハメハ)のほう。2013、14年のヴィクトリアマイルを連覇したヴィルシーナの初子である。
元メジャーリーガーの「大魔神」佐々木主浩氏の所有馬にして、7月8日の中京芝2000メートルに武豊でデビュー予定。ちょっと先の話でも、「無事に初戦を飾れば、札幌2歳Sへ」と聞いている素材なら、知りたいファンも山ほどいるだろう。
そんな発想から今回の主役に抜てきしてみたが、ヴィブロスはもちろん、ブラヴァスの母ヴィルシーナにも乗っていた安田助手からは「追ってからが意外と“ない”感じ」と肩透かしの答えが…。もしかして、話題先行の馬? その疑念は併走相手に完敗した13日の追い切りで確信へと変わりそうになったが、この話にはもちろん、続きがある。
「確かに追ってから伸びなかったんですけど、ある程度のところまでで今回は十分だったので、それ以降は強くやりませんでした。まずは走ることが嫌いになってしまわないように。そこが大事な部分ですからね」
3歳夏に急成長したヴィブロスと違い、2歳時から頭角を現して牝馬3冠レースはすべて2着だった母ヴィルシーナ。だが、彼女は早熟だったわけではなく、「成長曲線が違っていただけ」と安田助手は言う。
「シュヴァルグランも含めての晩成血統。それはヴィルシーナの子のブラヴァスにも共通していて、乗り味はいいけど、それ以外はまだまだといった印象。でも、それでいいんですよ」
彼が慌てないのは「この血統の良さは脚元が丈夫なところ。なので馬体さえしっかりとしてくれれば、強い調教をかけられる」という認識を持っているため。ハードな調教を課すべきタイミングに、走ることを嫌がるような馬になっていてもらっては困る。ゆえに前述のような調教内容になったわけだ。
「父がキングカメハメハの牡馬。おそらくはヴィブロスよりはヴィルシーナに似たスピードの持続力で勝負するタイプになると思いますが、どのような馬になったとしても大丈夫。走ってきます」
初戦から勝ち負けになると踏んではいるものの、見据えているのは7月8日より、もっと先。その軌跡の見届け役に立候補した次第である。