総合格闘技(MMA)に転向したメダリストも負けていない。格闘技イベント「RIZIN.30」(9月19日、さいたまスーパーアリーナ)で元K―1王者の久保優太(33)と対戦するリオ五輪レスリング男子グレコローマン59キロ級銀メダルの太田忍(27)が、本紙インタビューで意気込みを語った。MMA初勝利への強い決意を示すと同時に、東京五輪の60キロ級銀メダルの文田健一郎(25=ミキハウス)に熱いエールを送った。

――MMA2戦目が決まった

 太田 まだ勝ってないので勝ちたいし、勝たなきゃいけない相手だと思っています。しっかり準備して、当たり前に勝ちたいです。

 ――昨年大みそかのデビュー戦は所英男にアームバーで一本負けした

 太田(右ヒジの)ケガを治すのに思ったより時間がかかってしまって、打撃の練習を始めたのは4月くらいになってしまって。そこからまたトレーニングを始めてっていう感じです。今月からはパラエストラ柏で練習しています。

 ――所戦を踏まえた上で今回はどんな戦いに

 太田 所さんは打撃もできる寝技のスペシャリストで(対策として)やることは多かった。それに比べれば今回は準備しやすい相手だと思います。MMAファイターとして勝ちを見せられれば。フィニッシュ? パウンドアウトか一本か、どっちかじゃないですか。

 ――対戦相手のK―1時代の映像は見たか

 太田 結構見ています。印象? 賢い戦い方をするイメージです。しっかり作戦を立ててきて、パンチ主体だけど蹴りも強くてカウンターも上手で。打撃はスペシャリストだなっていう感じですね。打撃には付き合わない? いや、でもテークダウンできなかったら打ち合うしかないですから。MMAファイターとして総合的に戦っていけば問題ないと思います。

 ――自信がみなぎっているように見える

 太田 自信もありますし、ここで勝たなかったら意味がない。僕は(61キロ以下の)バンタム級の選手で今回は66キロ契約ですけど、問題ありません。誰とでもやるし、準備はしているし。

 ――ところでレスリングでしのぎを削った文田選手が銀メダルだった

 太田 対策された感じですね。タイプ的にも「俺が出てたら勝ってたな」って感じですけど(笑い)。まだ若いから3年後(のパリ五輪)もありますし、その時は28歳くらいで一番強い時期ですから。悔しさをそのまま持ち続けたら絶対に金が取れる。

 ――刺激になったのでは

 太田 それはもう。しっかりやってきた姿を見てるし、いろんな思いがあっただろうし。(2019年の世界選手権を制した)世界チャンピオンっていうのを背負って戦って。今回の五輪って、シードの選手はほとんど負けてるんですよ。

 ――確かにそうだ

 太田 それはたぶん、1年以上延期になった中で大陸予選を勝ってきた選手は試合を重ねて仕上がってきたからだと思うんです。その中で決勝まで行けたっていうのはすごいこと。ただ単に世界で一番になるための、五輪で優勝するためのトレーニングができていなかっただけだから。今後はそれをやればいいだけの話ですよ。

 ――なるほど

 太田 健一郎の場合はまだまだやることいっぱいあるし、伸びしろしかない。技術がしっかりしてるかっていったら、まだまだ改善すべきところがあるんです。組んでからの投げ技しかないから。例えば、あいつは胴タックルをやらないんですよ。それを入れるだけで違ってくると思うし、他にもやれば楽になることがいっぱいある。逆に言えばよくあれだけのバリエーションで銀を取ったなと思います。化け物ですよ。

 ――課題を克服して文田選手が金を取るころ、自身もMMAで世界一になっているのが理想だ

 太田 そうなればいいし…。いや、でもあんまり頼りないようだったら俺がパリに出てもいいですよ。

 ――二刀流!

 太田 はい(ニヤリ)。過去にもUFCに出ながらレスリングの試合にも出ていた選手はいますからね。いつでも呼んでくれたら。ケガしたら言ってよって感じです(笑い)。