待ち受けるのはイバラの道か。暴力問題などで昨年10月に引退した大相撲の元十両貴ノ富士ことスダリオ剛(23)の格闘技イベント「RIZIN.24」(27日、さいたまスーパーアリーナ)出場が決まり、プロレスラーのディラン・ジェイムス(29=ニュージーランド)と対戦する。強い決意と行動力で第2の人生を切り開いたが、難敵相手に苦戦は必至だ。

 付け人への暴行や差別発言問題を受け昨年10月、相撲協会に引退届を提出し受理されたスダリオは今年7月に格闘家転向を表明。RIZINマット参戦を熱望した。しかし元大関把瑠都(35=エストニア)や元幕内大砂嵐(28=エジプト)ら“角界OB”に振り回されてきたRIZIN側の反応はシビアで、榊原信行CEO(56)は当初「心意気というか、思いを伝えに来てもらえたら話は聞きます」と獲得に消極的だった。

 それが一転、契約に至ったのはスダリオの覚悟だ。現役時代から50キロ以上減量し、体重は約110キロに。自ら人脈をたどり、厳しい指導で知られる初代修斗ヘビー級王者・エンセン井上(53)の内弟子となり、住み込みで練習に打ち込んでいるという。RIZIN関係者は「思っていた以上の覚悟だった。『総合格闘技に骨をうずめる』と話しているし、信じてみようと。若さも魅力的だった」と経緯を明かす。

 13日のオンライン会見でスダリオは「僕が死ぬか、相手を殺すかの気持ちでリングに上がります」と決意表明。ただし、まだスタートラインに立っただけにすぎず、待ち受けるのは真のサバイバルレースだ。その意味でも初戦は危険な相手となる。

 会見では「そこに座っているやつは白いジーンズをはいてかっこつけているが、実はただのいじめっ子だ」と挑発的メッセージを発し、いかにもなキャラが先行したディランはその裏で、人生を懸けた大一番に闘志満々だ。RIZINとディランをつないだ全日本プロレスの木原文人リングアナウンサー(54)は「くすぶっているものがあるから燃えていますよ。彼にとってはこれが生きる道になる。大チャンスですから。何としてもつかもうと必死」と明かす。昨年11月に右カカトを負傷してから試合の機会に恵まれず、地上波放送される今大会をきっかけに“再ブレーク”を狙っている。

 もともとレスリングをバックボーンに持ち、全日本の世界タッグ王座戴冠実績がある実力者。現在は大阪に拠点を置き、元修斗世界王者の中蔵隆志氏(43)をはじめ、崔領二(40)とその兄で元ROAD FC王者RYO(42)の指導で総合格闘技の技術を吸収している。「大相撲VSプロレス」という伝統的な異種格闘技戦は、注目を集めること間違いなしだ。