格闘技イベント「RIZIN」の榊原信行CEO(56)が、ウィズコロナ時代の展望を本紙に激白した。8月の2大会(9、10日、神奈川・ぴあアリーナMM)が決まったが、今後は屋外会場でのイベント実現に向けて動いている。また噂される経営難、昨年のライト級GP覇者トフィック・ムサエフ(30=アゼルバイジャン)への“賞金未払い疑惑”についても言及。その真相とは――。

 ――興行を再開する

 榊原CEO(以下榊原)観客が安心して見られる新しい常識を僕らでつくるしかない。関係各位の指導を受けながらやっていきます。

 ――新型コロナ禍で経営難がささやかれるが

 榊原 やばいですよ。うちの場合、大会場で年間6大会くらいやって売り上げるつくり方をしている。それが3つも飛ぶっていうのは、ちょっともう…。売り上げで7億円くらいなくなったわけだから。これからコンスタントに大会をやって収益を上げていかないと、いつ消えてもおかしくない。崖っ縁? でも終わらせるわけにはいかない。事業を存続するために新しいものをつくり出して、いろんなチャレンジをしていきます。

 ――無観客開催の選択肢は

 榊原 全くなかった。観客がいるか、いないかで興奮が全然違うから。あ、でも野外での開催は考えていましたよ。7メートル四方のリングがあれば、どこでもできるのが僕らの強みなんです。東京タワーの下や富士山の麓、力道山の眠る池上本門寺とか。ヒントはアントニオ猪木さんとマサ斎藤さんが戦った巌流島決戦(1987年10月4日)。猪木さんって、やっぱり先進的なんですよ。

 ――3密も防ぎやすい

 榊原 そう。それに自然現象が戦いにどう影響するかっていうのも面白いし。実は、選手の反応も悪くないんです。朝倉未来、海は「ケンカみたいで面白いですね」って言いながら「雨が降ったらこう戦おう」って戦術を考え始めたから。「こいつらすげえなあ」って思いましたよ(笑い)。できれば今年中に屋外はやってみたい。感染拡大防止の観点から当面は首都圏で完結するしかないし、第1候補は東京タワー。今も話をしてます。

 ――ムサエフの件だが、アゼルバイジャンのニュースサイトで6月末に「優勝賞金1500万円が支払われないため、口頭で合意した3試合契約を破棄する意向」と報じられ騒ぎになった

 榊原 支払いが遅れたのは本当です。そもそも賞金は、ドーピング検査の結果を待って4月までに振り込むことになっていました。検体をアメリカのアンチドーピング機構に送って結果が出るのに2か月以上かかるので。それが5月になった。

 ――コロナの影響か

 榊原 そう。「キャッシュが回ってなくて国の支援も届いてないから、このままだと一時的に資金ショートしてしまう」とムサエフも含めみんなに説明して(支払いを)待ってもらっていました。その待っているタイミングで現地記者に「RIZINと今年も契約をする。サインは賞金が手元に届いてから」と話したのが、1か月以上たってセンセーショナルな記事になって出てしまったと。事実ともちょっと違うし、ムサエフも記者に文句を言ったそうです。

 ――なるほど。ではムサエフは今後も

 榊原 出ます。入国できれば9月に出てもらう予定です。

 ――8月以降は

 榊原 9月と12月末にさいたまスーパーアリーナでの開催を考えています。さらに大会を増やすか、今話した屋外の新シリーズにチャレンジするかはこれから考えます。RIZINはさらにスケールアップして、次の格闘技の未来を築きたい。そのためのチャレンジをまずは8月の2日間でやりたいと思います。