果たしてその狙いは――。格闘技イベント「RIZIN.14」(12月31日、さいたまスーパーアリーナ)でボクシングの元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(41)とエキシビション戦を行う“キック界の神童”こと那須川天心(20)が、12月6日前後に米国で公開練習を行うことになった。29日にRIZINの榊原信行実行委員長(55)が発表したが、驚くべきはその開催場所。なんと、ラスベガスにあるメイウェザーのジムに出向くという。異例とも言える米国での“敵地前哨戦”に至った両陣営の思惑に迫った。

 カード発表会見に出席した榊原氏は「那須川が米国に行って公開スパーリングをやることになる」と語った。その上で大みそか決戦を「少なからずKO決着になると思う。みんなが期待するような試合になりますよ。ヒリヒリした試合に」とエキシビション戦の結末とは思えない予測を立てた。

 決戦の舞台は言うまでもなく日本だ。それがなぜ、米国での公開練習なのか。きっかけはメイウェザー陣営からの提案だった。

 RIZIN関係者によると、昨年8月に実現した元UFC王者の格闘家コナー・マクレガー(30=アイルランド)戦の会見が話題になった成功体験があり「世界中で会見したらどうか。少なくともアメリカでも会見をやろう」との申し出があったという。

 2人の試合は全米でPPV中継される予定で、その放送収益の一部がメイウェザー陣営に分配されることが決まっている。そのためこの一戦が盛り上がり、何より視聴者数を増やすことが、多くの分配金を手にすることになる。宣伝効果を見込んでのことであるのは明白だろう。

 一方で「世界イコール米国ですから。米国で戦わないと世界で戦っているとは言えない」(榊原氏)という思いがあるRIZINサイドにとっても、渡りに船の提案だった。「米国でRIZINの名前を売りたい。日本だけではなく、世界中に注目されるRIZINにするには米国でPRするのが一番」(関係者)との考えから思惑が一致した。

 ただし、敵地に乗り込む那須川には大きなミッションが課せられる。同関係者は「メイウェザーは最初、ニヤニヤ見ているでしょう。なめてるから。でも、生で天心の動きを見て最後までニヤニヤしていられるかどうか。なめたままでいられるか。逆に天心の戦いはそこで始まっていると言っていい。いかに今回でメイウェザーの『ヤル気スイッチ』を押せるかどうか」と期待する。

「超格下扱い」しているのは疑いようのない事実で、榊原氏も「クリスマスが終わってからノンビリ日本に来るんじゃないですか。エキシビションだと思って」と話す。

 だが那須川にしてみれば、今回の試合はKOありの真剣勝負に他ならない。事実、17日のRISEの会場で「KO? もちろん狙いますよ」と闘志をむき出しにした。まして公開練習には、多くの米国メディアが取材に訪れる。ここで期待値を上げれば、いよいよメイウェザーも本気にならざるを得なくなる。

 2018年の格闘技界を締めくくる世紀の一戦。どんな結末を迎えるかは神童の“全米デビュー戦”にかかっている。